
猫組長 (菅原潮) (著)
講談社 (2020/6/19)
経済ヤクザだった人物による、コロナショック後の見通しや投資に関する話などを語っている作品。
暴力団の組長だったこともあり、暴力(武力や軍事力とも言う)が基軸通貨であるドルの裏付けになっているという話は確かにそうで、そうでなかったFacebookのリブラがつぶされた話も納得しやすい。
中国に関する話では人命に関する意識が低いなど知っている話も多いが、「匿名医師」などに代表されるプロパガンダがなされた話には改めて憤りを覚える。
トランプ大統領が株価を上げるために情報操作をしているという話も、いかにもありそうなことと感じた。
また、GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)についてはあまり知らなかった話が多くて興味深かった。
この中ではAppleは製造業、Googleはソフト、AmazonはサーバやASPなど、ビッグデータ以外の収益源を持つようになっているのに対し、Facebookだけは個人情報頼みで苦しいという話が特に印象に残った。
そして、タイトルにもある投資の話がなされている。
現在の相場は素人があまり手を出すべきでないことや短期取引については人間はAIに勝てないこと、それでもコロナショックのような大きな流れがあると人間の感性が勝ることなどが書かれている。
素人の投資家に欠落しているのは時間の観念だと書いていて「?」と思いながら読み進んでいくと、「これはという会社の株を長期保有する」という長期投資のことを指していて、著者のプロフィールやタイトルの印章に反してオーソドックスなものだった。
だからこそ「王道」の投資と書いていたのかと腑に落ちたし、黒社会にいた人の話がウォーレン・バフェットのような投資家と同じ結論になるのがちょっと面白い。
安倍首相が辞任を発表したことでこれからの情勢がさらに心配になるところだが、著者も語っているように希望を失わずに冷静な現状認識ができるようになりたいと思う。
- 著者の作品について書いた記事
- 『2019年表と裏で読み解く日本経済―米中覇権戦争が生むポスト平成の正体』

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ジェームズ・パードウ (著), 中島 早苗 (翻訳)
アスペクト (2010/6/25)
ウォーレン・バフェットの研究者でもある弁護士が、バフェットの投資手法について解説している作品。
ざっくり言うと、年月を経ても同じ業務を続けられて優秀な経営者がいる企業を、経済情勢の変化などで市場が暴落した時に購入し、バイアンドホールドするというものである。
そして、銘柄を絞り込んで集中投資することを語っていて、分散投資には否定的な見解を示している。
読んでいくと、バフェットの投資手法はシンプルなように見えて実際に実行するのは改めて難しいと感じる。
まず、経営者の判断が難しいことと(多分日本だからということもある)、銘柄を選んで下がる時期を待つということは投資する気満々の人だとなかなかできることではないように思う。
私の場合は『会社四季報』を読んでこれはという銘柄をタイミングをさほど考えずにちょこちょこ指値で購入して持ち続けることが多く、あまり待つということができないでいる。
本書で書かれている、価格が安くなったら購入したい銘柄をリストにしてチェックする手法は検討しておきたい。
終盤にはさわかみ投信の創業者である澤上篤人氏による長期投資の勧めが書かれていて、お馴染みの澤上節ではあるものの、購入する銘柄をリスト化しておく話はここでも書かれているのでチェックしておく。
必ずしもできることばかりではないものの、参考になる作品ではあったと思う。
- 関連記事
- 『日本株で成功するバフェット流投資術』
- 『ウォーレン・バフェット 成功の名語録 世界が尊敬する実業家、103の言葉』
- 『1分間バフェット お金の本質を解き明かす88の原則』
- 『ウォーレン・バフェット 賢者の教え―世界一投資家思考の習慣』
- 『ウォーレン・バフェット お金の秘密を教えよう』
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NHKスペシャル「大江戸」制作班 (編集)
NHK出版 (2018/5/23)
NHKで放送された番組・NHKスペシャル「大江戸」を元に作られた、江戸時代のインフラや商業、防災などについて書かれた作品。
複数の学者により書かれているため読みやすさにばらつきはあるが、江戸時代についての知らない話が多く扱われていて興味深い。
放送されていた中では、株式会社にんべん(鰹節などの水産加工品メーカー)の前身となる伊勢屋の話はリアルタイムだか再放送だかで観た記憶があり、大名向けの商売は利幅が大きいものの突然取引停止や借金の踏み倒しなどのリスクもあり、現金掛け値なしの商売を(おそらく三井の越後屋に倣って)始めていたのは素晴らしい判断だったと思う。
また、その後の後継者が後見人に乗っ取りをかけられたり、新たな商売を脅威に感じた同業者から妨害を受ける話は現代の企業ドラマにも通じるところがあると感じた。
また、江戸で勤める武士の暮らしについては、漫画『勤番グルメ ブシメシ!』やNHKドラマ『幕末グルメブシメシ!』の元となった『酒井伴四郎日記』の話も面白い。
ドラマでは高野藩という架空の藩だが、史実で酒井が勤めていたのは紀州徳川家ということは初めて知り、日記を解説した『幕末単身赴任 下級武士の食日記』も読んでみたくなった。
他にも江戸が沿岸部の凹凸が多い土地を人工的に造成した大都市は世界でもあまり例がないという話や、防災で瓦ぶきの屋根にするなかでの幕府と町方の駆け引き、幕末から明治初期にかけてオーストリアの写真家により撮影されたガラス原板ネガから当時の風景をデジタル技術で復元した画像など、興味深い話が多かった。
ガラス原板ネガからの写真デジタル復元や江戸始図の発見のように研究が進んで新たな事実はこれからも判明していくと思われるので、楽しみにしている。
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会社四季報編集部 (編集)
東洋経済新報社 (2020/6/19)
『会社四季報』について、発行元の東洋経済新報社の会社四季報編集簿による公式のガイドブック。
どのような取材や分析をしているかから、書かれているパラメータの意味や読み方、数字の組み合わせによる分析方法など、公式というだけあって具体的な内容となっている。
これまでは売上高の推移や利益率、有利子負債などをメインに見ていたが、それ以外のポイントでも重要なものがいくつもあることを再認識した。
例えば、これまで株主欄の上にある「日本トラスティ信託口」とか「日本マスター信託口」と書かれていて何だろうと思いながらそのままにしていたが、これは資産管理信託銀行のことで、その裏に機関投資家やヘッジファンドなどがいるので株主としてのプレッシャーが強い会社ということが書かれていて、疑問が解決したのですっきりした。
また、キャッシュフローの見方や、儲かっているはずなのに資金繰りが苦しい会社の見方、収益構造による状況の確認など、あまり意識してこなかった項目の話が非常に参考になった。
実は図書館で借りて読んだのだが、折に触れて読み返して確認する必要があると感じたので、改めて購入することにした。
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