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読んだ本の感想をつづったブログです。






久留米大学に所属する経済学者が、一般的な話と少し異なる日本経済と今後の展開について語っている作品。

バブル崩壊からデフレが続いているのは「勤勉と節約」による合成の誤謬によるもの、少子高齢化による労働力不足がこれまでの最大の問題だった失業を解決するであろうこと、日本の財政破綻は考えにくいこと、日本的経営の良さなどに続いて、日本の今後における課題や覚悟すべきシナリオなどを語っている。

読んでいくと確かに経済や社会の観点からは失業が最も厳しい事態というのは就職氷河期を思い起こすと納得しやすいし、企業があの手この手で支払う賃金を抑える手法(非正規労働者や外国人研修生など)を取ってきたが、少子高齢化でなおかつ移民などをしなければ正社員の雇用を増やして賃金を上げるしかなくなるという話は分かりやすい。

本書が出てから3年近く経ち、コロナ禍で外国との行き来が少なくなってきたことや、外国人研修生という制度への風当たりが強くなったことも、こうした傾向に拍車をかけると思われる。

ただ、少子高齢化自体は解決すべき課題であるとも語っていて、「これから生まれてくる子供」に対する優遇措置や、「親も配偶者も子供もいない被相続人」に高い相続税率を課すなどの対策を挙げている。
中には「相続登記の義務化」のように来年から施行されることが決定した話もこの時点でなされていて、妥当な話をしているのだと感じた。

政府や大企業に忖度しない形で話をしていることが伝わってきて、少しラディカルではあるが理解しやすい内容だった。
他の著作やコラムなどもまた読んでみようかと思っている。






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本郷 和人 (著)
文藝春秋 (2019/12/5)


NHKで放送されていた歴史番組「さかのぼり日本史」の室町時代から鎌倉時代にかけての部分を書籍化した作品で、著者の人気や知名度が上がったために文春文庫として再版された(と思われる)作品。

足利義満の時代に朝廷から祭祀や徴税の権限を奪った話、足利尊氏が京に幕府を開いて統治のノウハウを得ようとした話、鎌倉幕府の執権である北条氏が「撫民」の思想を持つようになったプロセスを北条時頼などから紹介した話、そして源頼朝が鎌倉に幕府を開いて朝廷と距離を置いた政権を作った話の4話が収録されている。

最初は農民からすると残虐で凶暴な収奪者だった記述が多い武士たちが自らの権利を保障するリーダーを求め、徐々に統治者としての意識を持って行動するようになった経緯が分かりやすく書かれていて、興味深く読むことができた。

教科書的な記述だけでなく、近年の研究成果として足利義満に皇位簒奪の意図はなかったという説や、治承・寿永の乱を源氏VS平家と捉えると当時の事情を読み違えてしまう危険があることなども書かれていて、そうした部分も読みごたえがあると思う。




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右薙 光介 (著)
アルファポリス (2018/9/1)


最大で5つまでがつくスキル・☆の数が3未満だと差別される異世界で、☆は1つだが強力な魔法を使える少年が活躍するライトノベルの第2巻。
第1巻が面白かったので、続けて読んだ。

前半はアストルが冒険者予備学校に通っていた頃の同級生であるミレニアやリックが、ミレニアの父であるバーグナー伯爵の虚栄心によるごり押しから難易度の高いダンジョンに行かされて行方不明となり、救出に行く話が描かれている。

そして後半では、アストルがユユとミントとともに故郷の村に帰郷した際の出来事が書かれている。

キャラクター間の関係性や雰囲気は前作と同様にいいと思うが、本作では盛り上がる戦闘シーンが少ないこともあり、ストーリー展開にやや単調な印象を受けた。
また、次への展開もちょっと期待しづらいと感じている。

次の第3巻を読むかどうかは、ちょっと考え中というところである。




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河合 敦 (著)
河出書房新社 (2021/2/15)


日本史で悪人や悪役というイメージがある人物を取り上げ、史実から必ずしも悪人ではなかったことや、悪人とされた事情などを紹介している作品。
下記の24人が扱われている。

蘇我入鹿、道鏡、藤原時平、平将門、平清盛、北条政子、足利尊氏、高師直、日野富子、斎藤道三、松永久秀、明智光秀、石川五右衛門、小早川秀秋、淀殿、由井正雪、徳川綱吉、吉良上野介、柳沢吉保、天一坊、田沼意次、井伊直弼、大久保利通、古川市兵衛

藤原時平の陰謀によって左遷されたとされる菅原道真が実は嫌われ者で本当に陰謀を企てていたという説や、梟雄とされる松永久秀が取った行動には釈明の余地が大いにあること、生類憐みの令で処罰された人は実は少なかったなど、あまり語られない話が多くて面白い。

また、『忠臣蔵』のようにヒーローを際立たせるために悪役にされた吉良上野介や仮託された高師直といった例や、成功したがゆえに嫌われた柳沢吉保、講談では派手に暴れているが史実では大したことをしていなかったり記録があまり残っていなかった石川五右衛門や天一坊などを見ていくと、必要とされたために悪役が生み出されていったことが分かってくる。

コラムとして「「やっぱり悪人!」な有名人」と「じつは「いい人」ではなかった有名人」も収録されていて、前者では藤原薬子、源頼朝、足利義教が、後者では豊臣秀吉、鼠小僧、野口英世が扱われているのも興味深く、これらをメインで書いた本が出たら読んでみたい。

興味深く、楽しく読むことができた。




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港瀬 つかさ (著), シソ (イラスト)
KADOKAWA (2018/10/10)


料理や家事、かわいいものなどが大好きな男子高校生が異世界に転生して活躍するライトノベルの第5巻。

本作では、普段は人間と同じ姿をしている人魚の吟遊詩人であるイレイシアが訓練生として初登場していて、脱水症状で倒れていたところを悠利から経口補水液(みたいなもの)を作ってもらうシーンが出てくる。

また、普段は冷静なブルックがキレた時の恐ろしさが描かれたり、訓練生や見習いたちがどのような経緯で「深紅の山猫」に来ることになったのかが語られるなど、設定の厚みを加える話が多い。
中でも、マグが見習いとなった理由や、先代のリーダーだという猫人族の女性の逸話などが面白い。

他にも、異世界ならではの害虫を退治する話や、アロイスといつも一緒にいる蛇の従魔の真の姿、食い合わせや合わせ調味料の開発など、悠利が巻き起こす騒動を安定して楽しむことができる。

食べ物の話と「深紅の山猫」に関わる人々のエピソードのバランスがうまく取れているシリーズで、本作も楽しく読むことができた。




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