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読んだ本の感想をつづったブログです。


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関 厚夫 (著)
さくら舎 (2018/9/6)


産経新聞で連載されていた、信長や戦国武将たちのことについて、著者とマキャベリが語り合う形式で書かれたコラムをまとめている作品。
著者は産経新聞の編集委員という肩書となっている。

信長が本能寺の変に際して発したとされる「是非に及ばず」という言葉は、「やむを得ない」という意味ではなく「もってのほか」や「けしからん」などの意味合いだったのでは?という話など、導入部やテーマは興味を引くものとなっている。

しかし、著者の前に偉そうに師匠面をして語り掛けてくるマキャベリのセリフがくせが強く、途中で読む意欲が低下して読むのをやめてしまった。

しばしば引いてしまう、「題材はいいのに構成が残念」というタイプの作品だと感じた。
新聞でコラムとして読むには刺激があったが、単行本としてまとめるとつらくなった、ということなのかもしれない。




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関連タグ : 織田信長, マキャベリ,


玉木 俊明 (著)
日本経済新聞出版 (2019/7/13)


経済や商業、貿易、物流、財政などの観点からイギリス史を語っている作品。

ローマ帝国や北欧の強国、フランスなどの一地方だった時代から辺境の島国となった時期、そして7つの海を支配する大英帝国の時代を経て、ヨーロッパの一員からブレグジットにより再び島国に戻りつつあるという歴史観で語られている。

経済で言えば毛織物工業において対岸のアントウェルペンやアムステルダムの下請けみたいなポジションだった時期も長く、原料や中間財の輸出国というだけで従属関係にあるのではなく、販路が限られていることがポイントだという話が印象に残る。

イギリスの前にヘゲモニーを握っていたのがオランダで、オランダが自由な商人たちの活動によって栄えていたのに対し、イギリスは国家が後押ししての支配を進めていた話に続いていく。

オランダから覇権を奪った要因にはクロムウェルによる航海条例があり、これはイギリスから中間貿易を行うオランダ船を締め出すことで海運業のシェアを奪うことを意図していて、複数回にわたる英蘭戦争も発生している。

また、人口や財政規模でイギリスより上だったフランスとは第二次百年戦争、フランス革命戦争、ナポレオン戦争など長らく戦い続けて勝利するわけだが、著者は要因として両国の税制と財政制度を挙げている。

イギリスは消費税の割合が大きくて経済成長に応じて税収を上げることができたのに対し、フランスは地租=固定資産税の割合が大きくて税収が上がらなかったこと、そしてイギリスが国王と議会の対立や南海泡沫事件などを経て国債制度を早く整えることができたことが書かれている。

そして産業革命や「世界の工場」と呼ばれたことから製造業が大英帝国を支えたと思われがちだが、実際には海運や通信、海上保険、金融業などによる部分が大きく、手数料収入で潤った話が書かれている。

また、世界の各地に築いた植民地から構成される「公式帝国」だけでなく、海運力でつながった「非公式帝国」の多さも指摘されている。

こうした帝国は維持コストがかかるために第一次世界大戦(著者は三十年戦争、フランス革命・ナポレオン戦争に続く「第三次欧州大戦」と呼ぶ)によって次のアメリカに覇権を明け渡すこととなり、アメリカの支配構造にも言及されている。

その後、第二次世界大戦後に福祉国家を志向した結果として「イギリス病」に陥ってからマーガレット・サッチャーによる改革、インターネットの普及、リーマンショック、ギリシア危機、ブレグジットと現代の話に続いている。

イギリス史でよく出てくる、海賊や外交、ドロドロした謀略などの話があまり出てこないのが新鮮だし、世界史で必ずしも意識するとは限らない産業や物流、産物などの話が多く書かれていて、興味深く読むことができた。





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関連タグ : 玉木俊明,


山田全自動 (著)
辰巳出版 (2022/10/21)


江戸時代の町人風のイラストで知られる山田全自動による、SNSなどで投稿していた自身の生活や趣味を描いたコミックエッセイをまとめている作品。

1人で楽しめる趣味や、気分転換に気が向いたらすぐにできそうな楽しみがいくつも書かれていて、共感しやすい。

特に、遠くに旅行するわけでもないのにビジネスホテルに泊まってみたり、日帰りで旅行する話が自分でも楽しさを知っているつもりなので、「そうそう!」と思いながら読んだ。

ビジネスホテルに関して私の場合は、保有する株式の株主優待(宿泊料金の3割引券×5枚)が使用できるホテルAZでしばしば泊まってみたりしている。

本作では町人風の人物ではなく作者本人が出てくるのがほとんどで、これはこれで楽しく読むことができる。





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砂原 浩太朗 (著)
小学館 (2020/12/18)


作家による、戦国時代の通説が近年の研究によって変わってきている事例を紹介している作品。

例えば、戦いに強いイメージのある信長が結構負けていて、強いことではなく敗戦を重ねてもアプローチを変えたり外交を駆使するなどして粘り強く勝利に向かっていた魅力があることを語っているところには共感が持てた。

また、悪人イメージが強い松永久秀のエピソードには後世に脚色された冤罪が多く、13代将軍の足利義輝が殺害された際は興福寺にいた弟の覚慶(後の義昭)を保護していたらしい話などが印象に残る。

ただ、戦国の前の時代である、南北朝や応仁の乱についての話では通説通りの話をしていて、近年の研究が反映されてないのは詰めが甘いと感じた。

全体的には読みやすく、気晴らしに読むにはいい1冊だと思う。





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