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塩野 七生 (著)
新潮社 (2014/7/28)


西ローマ帝国滅亡後、イスラム教の勢力とキリスト教の勢力が地中海をめぐって争った時代を描いた歴史読み物の第1巻。

中東から北アフリカ、イベリア半島と支配圏を広げたイスラム勢力は、相手が異教徒ということで首長が公認する形で海賊行為を繰り広げていることが書かれている。

対するキリスト教国側はビザンチン帝国が小アジアでイスラム勢力に圧迫された上に北からはスラブ人とも戦わねばならず、シャルルマーニュの後継者たちであるフランスや神聖ローマ帝国、そしてイタリアに盤踞するヴァイキング系のロンゴバルド人の勢力などは内輪もめを繰り広げ、ヴェネチア、ジェノヴァ、アマルフィ、ピサといった海洋都市国家はまだ弱小と、イスラム海賊からイタリアや周辺の島々を守ることができないという、まさに「暗黒の中世」といった状況が語られている。

北アフリカに近いシチリア島は特にイスラム海賊の襲撃を受けただけでなく、パレルモやシラクサといった主要都市も攻められていて、度重なる救援要請にキリスト教圏から本格的に救援に来るものがほとんどおらず、長期間にわたる籠城戦が報われないのはやりきれない。

さらに、イスラム海賊はイタリア半島の各地やフランス南部にも根拠地を作り、ローマやマルセイユといった大都市や、川をさかのぼった内陸部なども襲撃していて、その上襲撃しない代わりに金を出すよう脅迫するなど、やりたい放題をしていることが書かれている。
思っていた以上にイスラム勢力が地中海北岸を荒らしていたことが分かり、これだけ恨みを買ったのであればその後に十字軍が中東で暴れたのも理解できなくもないと感じたりもした。

この時代のローマ教皇はキリスト教徒たちが奪われ、殺されていくことに対して打てる手が限られていて、短命に終る人物が多かったようである。

他にも、イスラム勢力の支配下に置かれたシチリア島が、ギリシア、ローマ、イスラムといった文化が融合した独特な世界を形作ったという話も興味深い。

著者ならではの淡々とした語り口も読みやすく、続編も読んでみる。




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