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読んだ本の感想をつづったブログです。


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マット・リドレー(著), 大田直子(訳)
ニューズピックス
2021年03月05日


イノベーションがどのように生み出されるか、そして抵抗を受けがちであるかを多くの例を挙げて語っている作品。

蒸気機関や電灯のような分かりやすいものから始まり、公衆衛生、食料、家畜、通信、インターネットサービス、輸送手段など、多くの事例が挙げられていて興味深い。

例えば、先史時代にヒトはオオカミを家畜化した要素が強いイヌとして飼い慣らしてことに成功したが、実はヒトも元々は消化できなかった牛乳を消化できるようになったり、攻撃性を和らげるなどの家畜化がなされてきたという話が強く印象に残る。

イノベーションはエジソンのような天才が突然にひらめいたことで生み出されるものというイメージを持つ人が多いが、これは英雄信仰によるもので、実際は自由な環境で、多くの人々がさまざまなアイデアや気づきを持ち合って数多くの試行錯誤をして、より受け入れられる形に長い時間をかけてするものということが本書で最も語りたいことのようである。

エジソンにしても、莫大な数の失敗の上にイノベーションを生み出したことを著者は語っている。

それとは逆に、イノベーションを妨げるものも多く、既得権を脅かされる産業によるロビー活動を受けた政府の規制、特許権や著作権などの知的財産権をめぐる訴訟とそれで儲ける人々、優先付けを間違えて本当に必要なイノベーションを後回しにしてしまう政府の失敗、問題を起こしては金儲けのネタにするグリーンピースのような圧力団体などで、特にEUではこの手の問題が著しいことに驚かされるし、著者の他の作品でも出てきたグリーンピースが多くのイノベーションを妨げたことで多くの人々を死なせた罪は重いと感じる。

政府の補助や戦争がイノベーションを生み出す説にも数々の反例を挙げていて、例えば日本は政府の指導の下で戦後に経済成長したと言われるが、実際は政府が研究開発や教育に出した予算は他国よりも少なく、「科学立国日本が予算が少なくて・・・」みたいな主張の怪しさを改めて認識したり、日本学術会議はグリーンピースと同じようなものだと感じたりもした。
多分、日本では政治家や官僚と庶民のレベル差が小さい国というのがいい方向に働いているという説が当たっているような気がしていて、補助金よりも減税や規制緩和の方が効果がありそうな気がする。

著者は欧米でイノベーションを妨げる要素が多い一方で、中国でのイノベーションが著しいということを語っているが、挙げられている事例はそこまででもないように感じるし、著者も語っているように現在の中国もまたイノベーションを潰すタイプの「帝国」ということを考えると中国中心にはならないだろうとも思う。

2020年のパンデミックを受けての追記も収録されていて、イノベーションの不足が事態を悪化させたことも語っていて、著者にしては弱気な感じで終わっているのも考えさせられる。





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藤野英人(著)
日経BP
2024年01月10日


「ひふみ投信」のトップによる、世界がインフレ・株高の傾向に向かっていることや日本企業の経営者のマインドや世代が変わってきたことで、日経平均が10万円になることも十分考えられることを語っている作品。

日本経済が「失われた・・年」と呼ばれてバブル期以降は全然ダメのように見られることは多いが、著者はこの一因として90年代までの企業価値に関する評価方法が日米で異なっていて、それ以前を修正した株価のグラフを見ると、バブル期が異常に高く評価され過ぎていただけで、全体としては徐々に日本の株価も上がって言っているという話がまず印象に残る。

また、著者が運営する「ひふみ投信」がこれまで中小企業の株式を多く扱っていた理由として、大企業のトップたちの資質に疑問を持っていたためということがあったようだが、著者が面会した住友商事や味の素のような大企業のトップで魅力的な人々が増えてきたことを挙げているのも興味深い。

そして、日経平均が10万円に行ったとして、それが必ずしも皆が幸せになるとは限らないと釘を刺しているのも目を引く。
簡単に言えば、投資して株価上昇の恩恵を受けられる人とそうでない人の格差が拡大していくことを挙げていて、テレビのニュース番組で恣意的なインタビューということがバレている街の声として「株価が上がっても生活が・・・」と言っている人のことがそれに当たるのかもしれない。

他の著作でも見られる将来への希望が感じられるところに好感が持てる。
新NISAのつみたて枠でも「ひふみ投信」を少し積み立てているので、ぜひ高いパフォーマンスをあげていただきたい。





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菜根譚 心を磨く一〇〇の智慧

王 福振 (編集), 漆嶋 稔 (翻訳)
日本能率協会マネジメントセンター 2009/3/21


現代中国の作家が『菜根譚』の言葉を解説している本を翻訳している作品。

訳者によると、日本でこれまであまり翻訳されていなかったバージョンの言葉が入っていることと、現代中国の人からの観点による解説というのが特長だという。

ベースとなる思想は同じなのでこれまで読んだことがない言葉があったのかどうかは分からないが、解説の部分で中国の歴史エピソードが扱われているところが、他との違いが出やすかったかと思う。

ただ、ところどころで解説の文が長くなっていたり、ちょっと文章がくどいと感じる部分もあり、あまり合わなかった方の作品に当たるように感じた。




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関連タグ : 菜根譚,


伊藤 敏(著)
PHP研究所
2023年04月28日


ヨーロッパの現在の国際関係は中世に由来するものが多いという考えから、複数の国の歴史を背景から解説している作品。

フランス、ドイツ、スイス、スペイン、ロシア、ポーランド、ユーゴスラビアを章別に扱っていて、「分断と統合」が一貫したテーマとして扱われている。

全体的には元々は歩兵が主戦力だった地域で遊牧民の国家の侵攻を受けて騎兵が主力となる時期もあったものの、再度歩兵型の文明に回帰したというのが軍事的な歴史ということも書かれている。

各国ともに、カトリックや東方教会といった宗教、ローマ帝国やフランク王国の後継国家という権威から来る普遍化の流れと、各地に割拠する領主たちの独立志向、そして他の国家からの干渉が歴史上の事件の背景となっているようである。

フランスやドイツは比較的取り上げられることが多いが、
  • 領邦同士の内乱が多かったスイス
  • レコンキスタ以前からのスペイン
  • ロマノフ朝以前のモスクワ大公国(モスコヴィア)やウクライナの前身国家に分かれていた時代のロシア
  • 貴族の共和制という政体で統治能力はいまいちだったがリトアニアと連合して現在のウクライナやベラルーシの領域を支配していたポーランド
  • セルビアやボスニアが広大な領域を支配していた時期を含めたユーゴスラビア
などは、他のヨーロッパ史の本で必ずしも多く扱われる感じでもなくて知らなかった話が多いところが興味深かった。

予備知識が不足していて人名や地名ですぐに覚えられそうにないところは多いが、そこは本書を読んだ後に各地の歴史の本を読めばいいという話となる。




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