『オスマン帝国 イスラム世界の「柔らかい専制」』:雨読夜話

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オスマン帝国 イスラム世界の「柔らかい専制」 (講談社現代新書)
オスマン帝国 イスラム世界の「柔らかい専制」 (講談社現代新書)
鈴木 董 (著)
講談社 1992-04-16

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アナトリア半島を中心に、アジア、アフリカ、ヨーロッパの三大陸に約600年にわたって存在したイスラム大国であるオスマン帝国の歴史と、「柔らかい専制」と呼ばれる統治システムについて語られている本。

以前における日本の西洋史で扱われたオスマン帝国のイメージは、オスマン帝国と戦争を続けてきた西欧による歴史観に影響を受けているために侵略者という面がどうしても大きくなりがちだが、
  • 東西貿易で経済的にも文化的にも繁栄
  • 多民族、多宗教の共存(あくまでイスラム優位という前提だが)
  • 能力主義に基づく人材登用
  • 強力な常備軍(イェニチェリ)
など、当時としては西欧諸国からも羨まれるような多くの魅力を持った超大国だったことが分かってくる。

オスマン帝国のシステムについては、江戸幕府に例えると理解がしやすいかもしれない。
例えばこんな感じである
オスマン帝国江戸幕府
大宰相大老
宰相老中
イェニチェリ旗本八万騎
ハーレム大奥
ティマール制の州天領
サルヤーネ制の州譜代大名領

他にも皇帝が最初は自ら親政をしていたのが徐々に象徴と化していったことや、門閥がベースだが一部の有能な人材を吸い上げるシステムも働いているあたりなども似ていなくもない。
絶対君主制と封建制の違いがあるので単純な比較とはいかないが、アジアの東西で近い系統の語族ではあるためこのような見方をしてみるのも面白いと思う。

有望そうな異民族の少年を宮廷奴隷としてスカウトして育成し、官僚や将軍として登用していくというシステムはなかなかすごいことだし、中央にイェニチェリという形で強力な常備軍が存在していたことは傭兵中心だった西欧諸国からするとかなりの恐怖だったと思われる。
多民族・多宗教の共存についても単に寛容さで認めているだけではなく、紛争が発生するとイェニチェリがただちに鎮圧するという仕組みができていたことは当時としてはかなり文明的だったのではないだろうか。

ただしこうして繁栄を続けたオスマン帝国も組織の硬直化や社会の変化、西欧から伝わってきた国民国家という概念の影響によって衰えていくこととなる。
結果としてそれまで共存できていた民族間や宗教間で悲惨な戦争が続発したのは皮肉だと思う。

他にもイスラム法に則った形で皇帝権力が裏付けられていたことやイスラム法官の権力が大きかったこと、財政や貨幣のシステムなどについても興味深い話が続く。
大航海時代以前に地中海世界を制していた国なので、もっと歴史的な評価をされてもいいということが分かり面白かった。

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