鳥取環境大学教授の小林朋道氏による、『先生、廊下をコウモリが飛んでいます』から始まる動物生態学エッセイのシリーズ4冊目。
今回も大学やその周辺の森や山、島などでの動物の生態を扱ったエッセイが軽妙な語り口で書かれている。
下記のような話が書かれていて、これまで以上に学生が著者とからんでいるところが出てくる。
- 地下室で実験として飼っていたいたフェレットの行方不明事件
- テニスコートに入り込んで出られなくなり、干からびそうになっていたのを著者に救助されたイシガメ
- 池の中にある島に一頭だけ住む鹿との別れ
- 縄張りにヤギが入ってきて、微妙に威嚇をしているキジ
ツタにいたヤモリを捕まえて即興で講義を続けたエピソードも書かれていて、クスリと笑いながら読んでいった。
著者や学生たちが楽しみながら生物学を学んでいることが伝わってきて、好感が持てる。
- 著者の作品について書いた記事
- 『先生、巨大コウモリが廊下を飛んでいます!』
- 『先生、シマリスがヘビの頭をかじっています!』
- 『先生、子リスたちがイタチを攻撃しています!』
- 『先生、カエルが脱皮してその皮を食べています!』
- 『タゴガエル鳴く森に出かけよう! -トモミチ先生のフィールドノート』
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『先生、巨大コウモリが廊下を飛んでいます!』から始まる、鳥取環境大学の動物行動学者による大学での動物との関わりをつづったエッセイシリーズの4作目。
- カエルやイモリが脱皮した皮を食べる話
- 学生とともに実施した、スナガニが巣穴をどのように掘っているかの研究
- 貝に足をはさまれたちょっと情けないイモリ
- 成長しすぎたエボシガイや羽アリを襲うヒメハマトビムシなど、砂浜で見つけた珍しい生態
また、シリーズの『先生、シマリスがヘビの頭をかじっています!』でも書かれていたモビング(動物が天敵に一定の距離まで近づいて牽制などの防衛行動をとること)の話も出ており、今回は小鳥のホオジロが天敵のイタチにモビングしていたことが書かれている。
このなかで著者は、人間が火事や事故の現場に野次馬として集まるのも一種のモビングではないかという仮説を立てているのが興味深い。
それから、このシリーズでは定番となっているヤギ部(学内でヤギを飼って世話をする部活)ネタも健在で、今回は一頭のヤギが想定外のジャンプをして柵を飛び越えて著者を苦しめる話が出ており、このあたりの話は心なごむ。
他にもノーベル賞を受賞した動物学者コンラート・ローレンツの研究手法についての話なども書かれており、著者の自慢と自虐を織り交ぜた軽妙な語り口もあって今回も楽しむことができた。
- 著者の作品について書いた記事
- 『先生、巨大コウモリが廊下を飛んでいます!―鳥取環境大学の森の人間動物行動学』
- 『先生、シマリスがヘビの頭をかじっています!』
- 『先生、子リスたちがイタチを攻撃しています!』
- 『タゴガエル鳴く森に出かけよう! -トモミチ先生のフィールドノート』
[ローレンツの代表作]
タゴガエル鳴く森に出かけよう! -トモミチ先生のフィールドノート (Think Map 5) (ThinkMap) | |
小林 朋道 (著), 百瀬義行 (イラスト) 技術評論社 2010-05-19 Amazonで詳しく見るby G-Tools 関連商品 先生、カエルが脱皮してその皮を食べています! 先生、シマリスがヘビの頭をかじっています! 先生、子リスたちがイタチを攻撃しています! 先生、巨大コウモリが廊下を飛んでいます!―鳥取環境大学の森の人間動物行動学 ハチはなぜ大量死したのか |
『先生、巨大コウモリが廊下を飛んでいます!』などの著作で人気のある動物行動学者による、普段の研究や日常生活での動物の行動に関する考察を語っているエッセイ。
浜辺にある生物の痕跡や隠れている生物を調べるところから始まり、研究でよく入る森で意外な発見をしてそちらに夢中になったり、アメリカのサンショウウオの生息する森でアメリカ人研究者と奇妙なやり取りをするなど、さまざまなエピソードが語られていて楽しい。
以前読んだ『先生、シマリスがヘビの頭をかじっています!』に書かれていた、高山の水辺から離れたところで発見したヤモリのマヤにも触れられ、研究が済んでから元の山に放したことが書かれており、何かしらホッとした気持ちになった。
また、人間の行動を動物行動学の手法で考察してみた章もあり、電車やタクシーで相席になった際の居心地の悪さを縄張り意識と関連付けたり、大晦日の駅前でのイベントを部族集会と位置づけ、そこからホモ・サピエンスが協力行動の意思の確認に話を展開させたりしていて、このあたりの話も面白い。
研究生活では大変なことや悩みも多いと推察するが、それ以上に動物の行動を研究することを心から楽しんでいることが伝わってくる。
『先生、巨大コウモリが廊下を飛んでいます!』、『先生、シマリスがヘビの頭をかじっています!』に続く、生物学者による周囲の動物たちとの交流を描いたエッセイの第3作。
本作でも前作と同様、ユーモラスな語り口で動物たちとの事件の数々が書かれており、子リスが天敵を認識した際の威嚇行動とフェレット(イタチの一種)が受ける反応、大学構内でのモグラとの遭遇と捕獲後の実験、夜間にイモリやヤモリを捕まえようと奮闘する場面などの事件が扱われている。
また、モグラを見つけて少しびびり気味の著者をよそに平然とさわってしまう学生にショックを受けたり、カヤネズミを捕獲してきた学生たちに対して名前がしばらく思い浮かばずに焦ったりと、大学教授としての”張りぼての威厳”を保とうと苦心している様が面白い。
著者は人間動物行動学を提唱しているだけに、人間が動物をかわいがるメカニズムや、人間や動物が秩序やきれいさを選択する生物的な理由を考察しているなど、面白いだけではなく生物学について考えさせられるような内容ともなっていてなかなか奥が深い。
比較的早く読み終えることができる割に、印象にも残る。
先生、シマリスがヘビの頭をかじっています! | |
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先日読んでかなり面白かった、動物行動学者によるエッセイである『先生、巨大コウモリが廊下を飛んでいます!―鳥取環境大学の森の人間動物行動学』の続編。
前作と同様に、動物たちの興味深い行動と、著者や学生、そして著者の家族など人間たちの動物としての行動について多くのエピソードとともに語っている内容で、本作では著者が自身を”狩猟採集人”として行動する記述が多く、動物行動の研究を心から楽しんでいることが伝わってくる。
タイトルにある”シマリスがヘビの頭をかじる”というのは著者が発見したシマリスの行動様式で、もちろんシマリスが捕食者のヘビに対して積極的に襲いかかるわけではない。
シマリスはヘビに遭遇した際にモビング(逃げられる程度の距離を置いて警戒行動を取ること)を行い、ヘビが冬眠していたり死んでいたりと動かない状態であることを確認するとヘビの表皮をかじって体にヘビのにおいをつけて敵から襲われにくくする習性があるということで、驚かされる。
他にも高山に生息するイモリが通常水辺にいるイモリと異なり陸上を好むことや、著者が研究対象として研究室で飼っている青大将が逃げ出した後の顛末、人が犬や猫を選ぶのではなく犬や猫が飼い主を選ぶ場合があるという事例など、動物好きでなくても引き込まれる話が多く書かれていて面白い。
ユーモアの感じられる文体に微妙なポイントで太字で強調する工夫、自身をかなり変わった人物であると学生から見られているという自虐など、サービス精神旺盛なところも読んでいて楽しい。
- 著者の作品について書いた記事
- 『先生、巨大コウモリが廊下を飛んでいます!―鳥取環境大学の森の人間動物行動学』