『スキタイと匈奴 遊牧の文明 (興亡の世界史)』:雨読夜話

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スキタイと匈奴 遊牧の文明 (興亡の世界史)
スキタイと匈奴 遊牧の文明 (興亡の世界史)
林 俊雄 (著)
講談社 2007-06-16

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講談社から出ている興亡の世界史シリーズの2作目で、騎馬遊牧民の発生からスキタイと匈奴という古代史上の騎馬遊牧民の国家の実像について最新の研究成果を紹介している作品。

文献としてはヘロドロスの『歴史』と司馬遷の『史記』や班固の『漢書』などを中心に、そして旧ソ連諸国や中国で発掘された多くの考古学史料から、騎馬遊牧民の生活スタイルや国家のシステムなどについて多くの説が紹介されている。


前半では『歴史』などの古代ギリシアやアッシリアの史料に登場する謎の騎馬遊牧民であるスキタイの話で、黒海北岸からコーカサス諸国、中央アジアにかけて活躍したらしい。

アッシリアやアケメネス朝ペルシアといった大国を戦争で打ち負かすこともしばしばだったということで、動物が曲がりくねった文様が特徴的な金製の装飾品がスキタイ特有という。

また、遊牧民だけでなく農耕スキタイや農民スキタイと呼ばれた定住民も集団の中にいたそうで、謎が多いだけに興味が深まる。


後半では漢の高祖劉邦を苦しめた冒頓単于が率いた匈奴の話で、統治システムや漢との戦争を中心とした外交交渉についての研究成果が書かれている。

特徴的なのは大抵の場合人間や家畜を主に略奪していることで、さらってきた漢人や西域人には農耕や交易などをさせていた他、中島敦の小説で知られる李陵のようにこれはという人材には強引なスカウト活動もやっていたらしい。

また、寝返りや政略結婚といったある種の人的交流も盛んだったことが書かれており、特に宋代以降に比べると漢人の異民族へのアレルギーは少なかったように思える。

強力な武力で初期は貢物を納めさせていた匈奴も、漢に武帝という好戦的な皇帝が現れたことや中国人らしい謀略の数々によって分裂、弱体化していくことになる。

そして中国の史書から消えた匈奴の一派がヨーロッパでゲルマン民族大移動や西ローマ帝国滅亡を引き起こしたフン族だったのではないかという説も知られており、これについての様々な説も紹介されている。


全体としては考古学史料の説明が続くところにあまり関心が続かなかったりするところもあったが、定住民の国の史料では悪口ばかりが書かれがちな騎馬遊牧民の古代における活躍が様々に語られていて読みごたえがあった。
他にも関連書をいくつか読んでみたい。



[著者の他の作品]
遊牧国家の誕生 (世界史リブレット)
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 著者:林 俊雄
 出版:山川出版社
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