『イスラーム帝国のジハード (興亡の世界史)』:雨読夜話

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イスラーム帝国のジハード (興亡の世界史)
イスラーム帝国のジハード (興亡の世界史)
小杉 泰 (著)
講談社 2006-11-15

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興亡の世界史シリーズの6作目で、オスマン帝国を除くイスラム社会の歴史と、その中で培われてきたイスラムの概念をを扱っている。
(オスマン帝国を扱っていないのは10作目で扱うため)

タイトルにジハードという言葉があり、聖戦と訳されて”コーランか、剣か”というようなイスラムが戦闘的な宗教であるかのようなイメージを持たれがちだが、本来は克己をメインとした概念であり、以下の三種類に分かれるとしている。
  • 内面のジハード : ムスリム(イスラム教徒)が自己の信仰に向き合うこと
  • 社会的ジハード : 信仰に基づく社会を構成する
  • 剣のジハード  : 信仰上避けられない敵との戦い

イスラムはムハンマドがアラビア半島で始めたものだが、当時のアラビア半島はビザンツ帝国とササン朝ペルシアの間に挟まれた空白地帯で、しかもムハンマド自身も暗殺から逃れるためにメッカからメディナへ逃れるなどアラブの部族社会から迫害を受けていたとあり、当時の時点でイスラムが世界三大宗教の一つになると思っていた人はいなかっただろうとあることには驚かされる。

その後剣のジハードに勝利を重ねたイスラム社会は正統カリフ時代、ウマイヤ朝、アッバース朝、そしてその後の各地のイスラム国家分立時代と政権は変わっていくが、ウンマと呼ばれるイスラム社会は一つであり、人々の交流を妨げるものではないことが書かれている。

当初はイスラムの指導者を選ぶ際に大規模な内乱が多発するなどトラブル多かったようだが、それらに対する知恵ということでウラマー(イスラム法学者)の権威を上げたり聖俗の住み分けを行うなどの対策が功を奏し、中世にパクス・イスラミカとも呼ばれるイスラム社会による平和が実現されたことには、考えさせられることも多い。

その後帝国主義や国民国家という考え方によってオスマン帝国をはじめとして各地にあったイスラム帝国が崩壊し、ジハードという概念に揺らぎが生じて近代から現代にいたる。
どうしてもパレスチナ問題やイラン革命、9.11など武力闘争やテロという形での剣のジハードと誤解される場合ばかりが報道されがちだが、大多数の穏健なムスリムは内面のジハードと社会的ジハードを続けているという記述には理解できた。

イスラムという概念は本を読んだだけで理解できるものではないことは感じつつ、歴史から一歩踏み込んでイスラムの概念やその宗派などについても幅広く書かれており、イスラムへの知識として得るところが大きい一冊だった。

先日読んだ『スキタイと匈奴 遊牧の文明 (興亡の世界史)』も含めてこの興亡の世界史シリーズは充実した内容となっているので、他の興味ある時代や地域を扱っているところも読み続けたいと思っている。


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