『天下商人 大岡越前と三井一族』:雨読夜話

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天下商人 大岡越前と三井一族
天下商人 大岡越前と三井一族
高任 和夫
講談社 2010-10-08

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江戸中期を舞台とした歴史経済小説。
大岡越前守忠相と、2代目高平をはじめとする三井家の人々が主人公となり、それぞれの立場からせめぎ合いを続ける様子が描かれている。

時代劇では大岡裁きのイメージの強い忠相だが、読んでいくと江戸町奉行の職掌は裁判の他に民政や商業政策など幅広いことが読んでいくうちに分かってくる。

時代は徳川将軍6代家宣から8代吉宗にかけての頃で、幕府の体制が貨幣経済の発達についていけなくなり、以下の形で危機に瀕していることが書かれている。
  • 農民から税を米で徴収して武士の給与も米で支払われるため、新田開発などで増産すればするほど米価が下がって武士の生活が困窮する
  • 江戸が金、上方が銀という使用通貨の違いにより、為替レートの変動で江戸と上方の景気が大きく影響を受ける
  • 綱吉時代は荻原重秀の通貨の質を落とす改鋳という形で量的緩和を行っていたが、その後通貨の質を上げる政策を採ったことが金融引き締めと同様の効果を発揮して ひどいデフレに入ってしまった
忠相は吉宗から米価を上げるよう命じられ、物価や為替レートの統制、新田開発、民間人の起用など様々な政策を試みるが、市場原理に逆らう政策では商人たちの抵抗も強くなかなかうまくいかない。

一方、三井では創業者である高利(宗寿)の後を継いだ高平(宗竺)の代に当たり、高利の主だった息子たちを6つの本家、縁者を連家とし、大元〆(現在で言えばサラリーマン社長)も参画した最高会議で重要事項を決定するなど、組織的な経営を行うようになっていた。

家訓や過去の倒産事例をまとめるなどのルール作りを進める他、幕府内にパイプを作って情報を集めたり、状況に応じて適切な手を打つなどしたたかなところを見せ、潜在的には幕府よりも経済力があるかもしれないことが書かれている。

特に、幕府はいずれ潰れるだろうが三井は生き残る、ただ幕府が潰れた後のことが読めないのでとりあえずは延命させておこうという意味のことを述べていた場面には凄みを感じた。

扱っているのは江戸時代だが、著者が経済小説の著作が多いこともあってか完全に経済小説のスタイルとなっているように感じられて面白い。

忠相を東京都知事+経済産業大臣+国土交通大臣その他、高平を三井財閥の総帥、吉宗を財政再建路線の首相と読み替えると、かなりイメージが明確になってくる。



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