『棠陰比事』:雨読夜話

ここでは、「『棠陰比事』」 に関する記事を紹介しています。
棠陰比事 (岩波文庫 赤 34-1)棠陰比事 (岩波文庫 赤 34-1)

桂 万栄 (編), 駒田 信二 (翻訳)
岩波書店 1985-01-16

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中国の南宋時代に編纂された名裁判の事例集である『棠陰比事』(とういんひじ)を現代語訳した作品。

棠陰とは周を建国した功臣の一人である召公奭(しょうこうせき)が梨(棠)の木陰で裁判を行ったことから裁判のことを指し、比事とあるのは2つの似た裁判を比較している。
つまり、名裁判比べという意味となる。

この書物は江戸時代に日本に伝わり、ベストセラーになったという。
井原西鶴の作品や大岡裁きのネタにもなっていることでも、その人気は伝わってくる。
(子供を取り合う母親を裁いた大岡裁きが有名)

72対の144話で構成され、1話あたり2~3ページなので読みやすい。

詐欺、冤罪、誣告(他人を罪に陥れる)、遺産争い、殺人、偽証など、現在の裁判やミステリーに登場する多くの事例が扱われている。

こうした事件に対して、現代で言うところの裁判官や検事が供述の論理矛盾を探したり状況証拠を見出すなど、真相を突き止めて明快に裁いていく。
  • 遺産争いでは”双方とも相手よりも取り分が少ないというんだな?”と確認し、それぞれの原告をお互いの相手宅に引っ越させて文句を言わせないようにする。
  • 被害者が恨みを買うことがなかったか、金銭を貸していなかったか、奥さんが美人で浮気していなかったかなど、動機の点から真相に迫るアプローチ
  • 真犯人を見つけるため、盗品と同種のものを買い取る布告を出してひっかける手法
など、比較的順当な手段から現代の日本ではありえないやり方まで、様々な調べ方・裁き方をしている。

兵法を応用することも必要と書かれているなど、人権や財産権の問題もあって現代ではできない手法もあるが、考え方自体は通用するところも多いと思う。

特に、罪が疑わしければ刑を早急に執行することは避けるべきとしていたり、条文にない事例は傾向の近い事例を応用して現実と法の精神に即して裁いていくべきで、条文のみにこだわってはいけないとしていることなどは、法を考える上で重要なことだと思う。

こうした事件の審理には予断が付きまとうので、裁判官や裁判員にも想像力や仮説を立てる力が求められることが分かってくる。
裁判や事件調査のエッセンスがコンパクトな話としてまとめられ、思っていた以上に面白かった。






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