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『奇跡の日本史―「花づな列島」の恵みを言祝ぐ』:雨読夜話

ここでは、「『奇跡の日本史―「花づな列島」の恵みを言祝ぐ』」 に関する記事を紹介しています。
奇跡の日本史―「花づな列島」の恵みを言祝ぐ
奇跡の日本史―「花づな列島」の恵みを言祝ぐ
増田 悦佐
PHP研究所 2010-12

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主に文明論の観点から日本について前向きな著作の多い増田悦佐による、日本とヨーロッパの歴史比較をしている作品。
副題にある「花づな列島」とは、英語での日本の美称を訳した言葉だという。

ヨーロッパはあったが日本にはなかった、それでいてなくて幸せだったというものを挙げて、いかに日本が素晴らしい歴史をたどってきたかを語っている。

挙げられているのは馬車、宗教戦争、城塞都市、革命、重商主義などで、素晴らしいとされる概念の裏にあるヨーロッパの陰惨な歴史が語られていく。

以前読んだ、山本七平だったか渡部昇一だったか日下公人だったかの本で、日本が中国から取り入れなかったものに科挙、宦官、家畜の去勢、孟子の革命思想などが挙げられていたと記憶しているが、他にも多くのものや概念を取り入れなかったことに驚かされる。

以前読んだ渡部昇一の『歴史の読み方―明日を予見する「日本史の法則」』ではフランス革命が普遍主義の行き過ぎによる悲劇だったと書かれていてインパクトを受けたが、さらに具体的で生々しい書かれ方をしている。
(『歴史の読み方』ではイギリスはフランスよりマシという結論だった)
革命と受け取るには不自然な点が多く、ヨーロッパ最大・最後の宗教戦争と捉えるべきという話にはなるほどと思った。

日本は欧米に比べて、”革命がなかったので市民の意識が低い”とか”エリートや指導者が育たない”とか”島国根性”とか”堕落している”といった自虐的な言論が知識人とされる人々やマスコミからなされることが多いが、陰惨な歴史を経なければならないならそうした性質は得なくてもいいや、日本に生まれてよかったという気持ちになる。

ヨーロッパと日本を対比させる形で話が展開されていて、以下のような流れで理解した。

ヨーロッパでは、
  • 農耕民と遊牧民が分かれて生活し、飢饉になると農耕民と遊牧民が土地争いをするため大きな戦乱が多い
  •     ↓
  • 領主は戦乱から年貢を守るため、城塞都市を築いて住民を囲い込み、ギリギリまで搾取する
  •     ↓
  • 領主と結びついた教団も、立場を利用して信仰を強制したりお布施を取るなどのやりたい放題
  •     ↓
  • 結果、有能だが強欲なエリート/搾取され恐怖に萎縮する民衆という図式になる


日本では、
  • 農耕民と漁民が近接して生活し、大規模な土地争いにはならない
  •     ↓
  • 城砦都市が成立せず住民は自由に移動できるため、戦乱は民衆の人気獲得競争の要素を帯びてくる
  •     ↓
  • 領主や教団はポピュリストや商売上手が多くなり、相対的に民衆の力が強くなる
  •     ↓
  • 結果、いまいちなエリート/したたかで賢い民衆という図式になる


この図式からすると、本書で日本は昔から真正大衆社会だったと表現されている理由が分かってくる。

それにしても、欧米の知識人が過去の悪行を棚に上げて日本などにあれこれ非難するのはみっともない行為だと感じるし、キリスト教自派のためという名目で行われた数々の残虐行為には恐怖を覚える。

また、「鎖国」と呼ばれる江戸時代の管理貿易についても肯定的な評価をしている。
これは当時のスペインやポルトガルが最終目的としていたキリスト教の自派(カトリックやプロテスタント)の侵略行為への排除という意味合いから、”逆封鎖”と表現している。

戦国時代以降も海外との交流を続け、なおかつ信長のような指導者に率いられて東アジアや東南アジアに勢力を拡大していた日本を想像することもあるが、最終的には”第二次世界大戦のように調子に乗って追い返される”とか、”西欧諸国から悪い影響を受けただけ”のような形になっていたような気がする。
日本の身の程というものがあるのだろう。


他にも、
  • 新興国と衰退国の経済カーブが交わって戦争の確率が高まる”戦争交差点”という概念を紹介し、日本が田中角栄によるブレーキがかからず経済成長を続けていたらアメリカに戦争を仕掛けられたかもしれない
  • 中国の冷凍餃子による中毒事件で中国からの輸入が激減するなど、日本ではボイコットなどやらなくても消費者が自主的に危険な商品、不衛生な商品などを排除できるだけの賢さと購買力がある
  • 現代のように、日本の知的エリートのだらしなさを見て日本の民衆に高圧的に接した結果、痛い目に遭わされた事例は江戸時代の日本とオランダでもあった
  • 日本の知的エリートが日本衰退論を吹聴していることは、意図してのものなら実に卑劣で汚いやり方だが、実際にそう思い込んでいるだけに欧米の知識人もだまされること
などが書かれている。

日本の知識エリートがやらかす数々の失策について、これがあるから外国の知識エリートがだまされたり日本の大衆が賢くなるから大切にしたいとも述べていて、強烈な皮肉に笑ってしまう。

あまり有名でない文献から意外な概念を引っ張り出したり、日本の知的エリートと思われる学者の意見に

なんというあまったれた歴史認識だろう

といった形で攻撃するなど、著者らしさが出ているのも面白い。





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この記事へのコメント
上手に増田節をちゅうしつしまとめていますね。文才が羨ましい
2014/03/15(土) 17:13 | URL | 団塊 #-[ 編集]
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