『山下清の放浪日記』:雨読夜話

ここでは、「『山下清の放浪日記』」 に関する記事を紹介しています。
山下清の放浪日記
山下清の放浪日記山下 清 (著), 池内 紀 (編集)
五月書房 2008-12

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貼り絵で知られる画家・山下清が20代頃に書いた日記を、池内紀が編集した作品。
先日福岡アジア美術館での特別展に行った際、展示されていた清の文章に関心を持ったため読んだ。

清が書いた原文は難しいわけではないが、点(、)や丸(。)、かぎかっこ(「」)などの記号を全く使っていない。
これは清によると”実際の会話で点とか丸とは言わないから”という。
そのため、本書で編集されているように記号がついていた方が読みやすい。

通っていた八幡学園がいやになって逃げ出すところから始まり、千葉や茨城周辺を放浪して弁当屋や魚屋などで働くこともあるが、半年くらい経つとまたいやになって逃げ出すという行動が克明につづられている。
その間、実家の母親のもとに戻ったり、八幡学園が懐かしくなって戻るシーンも出てくる。

また、行く先々では嘘を言って食べ物を貰ったと正直に書いており、苦笑しながら読んでいくことになる。
編者の池内紀が「はしがき」で、ただ徹底して、この世に合わない人物だった。と表現していたこととも符合していて妙に印象に残る。

太平洋戦争開戦、空襲、敗戦、食料の配給なども書かれ、兵隊に取られて殴られるのは嫌だと何度も書いている。
結局徴兵検査で不合格になってホッとしたことも書かれているが、これは彼の作品を鑑賞することができる後世の我々にとっても幸せなことだったと思う。

千葉、茨城、福島、栃木、静岡などあちこちを訪れていて、富士山に登山しようとしたがつらくてあきらめるなど、観光もしている。

巡査に職務質問を受けたり、悪ふざけが過ぎて留置所に入れられたり、精神病院に入れられるなどのエピソードも出てきて、『裸の大将』の元となっただけのことはあると思った。

駅の待合室や周辺の目立たない場所で寝泊りすることが多く、駅の待合室で乗客や他の浮浪者との会話もしばしば書かれている。

例えば”色気とは何か?”や、”暑い時期に長袖の服を着るのと半袖の服を着るのはどちらが好ましいか?”といった問答を行っているのが面白い。

ひとところに留まっていると出ていきたくなるという清の行動は、先日読んだ『爆笑問題のニッポンの教養 「脱出したい!」のココロ 海洋生命科学』で塚本教授が語っていた、『おくのほそ道』でいうところの”そぞろ神”の働きによるものなのかもしれないと感じておかしくなった。

また、行く先々で人々の善意を受けたり働いたりという行動を読んでいて、以前似たようなものを見た記憶があると思った。
しばらく考え、日本テレビ系『進め!電波少年』の企画でブームとなった、猿岩石のユーラシア横断の旅だと気付いた。

本書の元となった『山下清放浪日記』が1958年に出版された際はすぐに売り切れたいうことだが、『猿岩石日記』みたいな感じだったのかもしれない。

清自身による放浪時の姿を描いた素描画も掲載されている。
シンプルだがおかしみと不気味さが入り混じった感じのタッチとなっていて、貼り絵とはまた違った感じを楽しむことができる。

清の人柄が感じられて興味深く読んだ。
本書の後に清が書いた日記も出版されているので、これらも読もうと思っている。



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