『現地発 エジプト革命――中東民主化のゆくえ』:雨読夜話

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現地発 エジプト革命――中東民主化のゆくえ (岩波ブックレット)
現地発 エジプト革命――中東民主化のゆくえ (岩波ブックレット)
川上 泰徳
岩波書店 2011-05-11

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アレクサンドリア駐在の朝日新聞記者による、1月25日に始まったエジプト革命(民主化運動によるムバラク政権打倒)をリアルタイムで報じたニュースをまとめている本。
ニュースなどで事件そのものは知っていたが、細かくはよく分かっていなかったので読んでみた。

初めは警察などを司る内務大臣の辞任を求めるためのデモだったのが、途中からムバラク辞任を求めるものへ発展したことや、イスラム原理主義組織のムスリム同胞団もデモに参加しつつも、イスラムのスローガンは叫んだりせず、世俗的な形を残したままのデモだったことなどが書かれている。

今回の事件は、以下のような経緯をたどっている。
------------------------------------
・デモが開始され、警官隊と衝突する
   ↓
・政府がデモ対策のため、インターネットの遮断を断行する
   ↓
・警察署の焼き討ちによって警官が逃げ去ったことで無警察状態になり、
住民は自警団を結成
   ↓
・軍は実力行使しないことを明言
   ↓
・ムバラクがスレイマンを副大統領に任命し、野党との対話を開始したり、
癒着や腐敗を批判されてきた財界関係者を切り捨てるなどのガス抜きを図る
   ↓
・切り捨てられた財界関係者が金で動員したと思われる大統領支持者が出現し、
民主化デモと衝突する
   ↓
・スレイマンが大統領支持派のデモに対し、扇動者は処罰すると表明したことで
大統領支持派がいなくなる
   ↓
・その後も任期まではやめないと演説を続けるムバラクと、あくまで辞任を要求する
デモとの間でのやり取りが続く
   ↓
・結局ムバラクが辞任に追い込まれ、沸き立つ
------------------------------------

著者が最も強く感じたと思われるところは、非暴力の力についてである。
政府側からすれば暴動やテロに対しては治安維持という大義名分があるために鎮圧が比較的容易なのに対し、情報化が進んだ現在、非暴力の抵抗運動を力で抑え込もうとすると、国際社会からの反発を覚悟しなければならない。
その意味で、パレスチナでイスラエルへの自爆テロを繰り返すハマスなどはやり方がまずいと批判している。

日本ではどうしても東日本大震災や福島の原発事故、政界の混乱などばかりが報道されがちだが、本書で扱っている中東発の民主化運動も世界史的に大きなトピックの一つであり、知っておく価値がある。

短いながらも日々推移していく情勢が分かりやすく書かれており、エジプトでの民主化運動の概略を把握することができて興味深かった。



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