『逆説の日本史』シリーズなどで知られる井沢元彦による、世界史編。
まずは古代文明からということで、エジプトと中国の文明を取り上げ、発展や衰退の経緯を考察している。
前半のエジプト文明編では最初に神話の話が続いて読むのが少々つらかったが、ピラミッドやヒエログリフの話になると面白くなってきた。
特に、ヒエログリフが表意文字のように見えるのに実は表音文字で、しかも表意文字の要素もあるというややこしさがあることは知らなかったので驚いた。
文盲の人用には書きづらいがイメージから覚えやすいヒエログリフを使用したらいいのではないかという著者からの提言があったりして、文字の表記法によって考え方も規定されるものなのだろうと改めて感じた。
後半の中国文明編はある程度の予備知識がある分、スムーズに読んでいくことができた。
靖康の変(北宋が女真族の金に首都を落とされ、皇帝一族が連れ去られた事件)などの北方の遊牧民国家によって侵略された屈辱が原理主義的な朱子学を生んだことや、その朱子学が親孝行を至上の徳目としたために中国や朝鮮半島などで家族・親族による汚職がないかとしていること、朱子学の商業蔑視が毛沢東やポル・ポトによる愚行の数々につながっていることなどが書かれている。
日本も徳川幕府で朱子学が官学とされた結果、幕末での開国交渉でうまくいかなかったケースや昭和期における軍部の暴走などに朱子学の悪影響が出たのではないかとしている。
儒教や朱子学が哲学ではなく宗教だという話を具体的な例を挙げて解説し、その負として結果が汚職の蔓延や歴史の歪曲、深刻な環境汚染につながっているとしていて、中国や韓国、北朝鮮などでこうした部分の解決は絶望的だと思わされた。
著者の語り口が日本史から世界史へと題材を移しても大筋は変わっておらず、興味深く読むことができた。
- 著者の作品について書いた記事
- 『逆説の日本史〈9〉戦国野望編―鉄砲伝来と倭寇の謎』
- 『逆説の日本史〈11〉戦国乱世編―朝鮮出兵と秀吉の謎』
- 『逆説の日本史 13 近世展開編江戸文化と鎖国の謎』
- 『逆説の日本史 14 近世爛熟編』
- 『逆説の日本史 15 近世改革編』
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