『逆説の日本史 20 幕末年代史編3 西郷隆盛と薩英戦争の謎』:雨読夜話

ここでは、「『逆説の日本史 20 幕末年代史編3 西郷隆盛と薩英戦争の謎』」 に関する記事を紹介しています。
逆説の日本史 20 幕末年代史編3 西郷隆盛と薩英戦争の謎
逆説の日本史 20 幕末年代史編3 西郷隆盛と薩英戦争の謎
井沢 元彦
小学館 2013-10-10

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

関連商品
逆説の日本史 21 幕末年代史編4 高杉晋作と維新回天の謎
逆説の日本史〈19〉幕末年代史編2―井伊直弼と尊王攘夷の謎
逆説の日本史 18 幕末年代史編1
逆説の世界史 1 古代エジプトと中華帝国の興廃
逆説の日本史17 江戸成熟編 アイヌ民族と幕府崩壊の謎


井沢元彦による『逆説の日本史』シリーズの幕末編の3冊目で、1862~1864年の4年間を扱っている。
この時期は寺田屋事件、文久の改革、生麦事件、薩英戦争、八月十八日の政変、天狗党の乱、池田屋事件、禁門の変、馬関戦争と短期間に重大事件が連続して発生しており、こうした事件の関連や背景を丁寧に解説している。

時系列的に描くところだけでなく、西郷隆盛、坂本龍馬、勝海舟、高杉晋作といったキーマンたちの動向、例えば西郷が島津久光に流罪にされて殺されそうになった話や高杉の雌伏ぶりなどについても書かれている。

この時期は朱子学と天皇崇拝、開国問題などがあいまって尊皇攘夷思想が熱病のように蔓延している上、開国と攘夷、公武合体と反幕府と2つの対立軸から多くの争いが発生し、「現状の日本では諸外国に戦争で勝つのは無理」などと本当の事を言うと斬られるという恐ろしい社会情勢だったことが書かれている。

こうした情勢の中でも勝海舟や(上海渡航後の)高杉晋作、高杉の主君である毛利慶親(敬親)・定広(元徳)父子などは開国が不可避ということを見極めた上で徐々に物事を進めているところに凄みを感じた。

また、幕府、朝廷、薩摩、長州、土佐、会津といった諸勢力の中でも様々な派閥があり、次々と事態が変わっていることが徐々に分かってくる。
そこに島津久光の器量の小ささによる言動、一橋慶喜の猜疑心による重大な戦略ミス、20代前半という若さながら長州や朝廷を動かした久坂玄瑞の策謀、三条実美ら過激派公家の暗躍や尊攘志士たちの暴発などが複雑に関係していくこととなる。

攘夷についても薩英戦争でやられた薩摩は冷静に外国の優位を認識して路線変更したのに対し、馬関戦争でやられた長州ではあくまで軍事的な劣勢を認めないという朱子学的な思想が多数を占めたことが書かれていて、この影響が太平洋戦争での敗戦につながったとしている。
一方でこうした考え方が外国と戦うというモチベーションを与えたともしていて、功罪がそれぞれあるのが分かる。

それにしても革命には流血がつきものとはいえ、多くの事件で優秀な人物が次々と死んでいったのは残念に思う。
久坂玄瑞や清河八郎、武市半平太のような人物はどうやっても長生きできなかったと思うしできたらできたで困った事態となっていたと思うが、吉田稔麿や望月亀弥太などはたまたま京都で池田屋事件に巻き込まれていなければ明治時代にも活躍できたと考えている。
寺田屋事件でも大山巌、西郷従道、篠原国幹といった後に明治政府の要人となる人物も殺された可能性があったわけで、生き残ること自体が大変な時代だったと思う。

この時代をさらに分かりにくくさせているのが、島津久光、伊藤博文、井上馨、山県有朋といった明治政府で表立って批判できない立場に上がった人物の業績が盛られたり、重大なミスや問題行動が隠されてしまったこと、そして生き残った人々が尊敬する人物の名誉を守るためについた嘘などにもあるとしていて、歴史の真相をたどることの難しさを感じた。

あまりにも多くの内容が入っていたため、ここでの文章も長くなってしまった。
知的な刺激が多くて一気に読み進んでいけたので、幕末年代史編の他の作品も読んでみようと思う。




にほんブログ村 本ブログへ
スポンサーサイト

関連タグ : 井沢元彦,

この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック