『できそこない博物館』:雨読夜話

ここでは、「『できそこない博物館』」 に関する記事を紹介しています。
できそこない博物館 (新潮文庫)
できそこない博物館 (新潮文庫)
星 新一
新潮社 1985-02

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ショート・ショートと呼ばれるごく短い短編で知られるSF作家・星新一が、作品を書くために大量に書き溜めていたメモと、それらを発想するに至った経緯、そしてなぜ作品にならなかったかを語っているエッセイ集。
10年以上前に読んだものを再読し、前回以上に関心を持って読んだ。

謎の装置、宇宙人の来訪、殺し屋、薬品、ロボットなどを題材として、面白そうな筋書きがいくつも書かれている。

発想のヒントとして異質なものを組み合わせることを述べていて、アイデアを練る過程を書いているのが舞台裏を明かすようですごい。
そして解説する過程でそこそこの作品になりそうだと気づき、なぜ作品にしなかったかと悔やんだりして見せているのも面白い。

作家になりたての頃であれば編集者に渡したかもしれないと語る一方で、作品にしなかった理由として、例えば下記にようなところを挙げている。
  • 検討してもアイデアが一定のレベルに達しない
  • 長編になって書きづらかったり、好まない描写が必要となるなど、題材が作風に合わない
  • 結末からストーリーを作らないので、作品にするのをやめた
  • 着想に現実が追いついてしまい、ネタが古びた
  • 悪魔との契約のように、よほどひねらないと安易な作品になってしまう
一定以上の質を維持するためには、多くのものを捨てなければならないことが分かってくる。

中には「盗賊会社」や「品種改良」のように、実際に作品としたアイデアの原型となるメモも紹介しているのもいい。

フレドリック・ブラウンやロバート・シェクリイ、ヘンリイ・スレッサーといった作家に影響を受けたことは他のエッセイでもしばしば述べているのを読んでいるが、『リアル・スティール』などで知られるリチャード・マシスンの話もしていたのに驚いた。
前回読んだときはマシスンのことを知らなかったので、なんとなく読み飛ばしたのだろうと思う。

1960年代くらいは企業のPR誌が盛んに出されて原稿の注文が多かったらしく、それ向けに書いたメモの話もしていて、このあたりは時代なのだろうと感じた。
そうしたところを除けば、現在読んでも十分通用するアイデアがほとんどなので、著者ができるだけ古びない作品を意図していたことは成功していると思う。

アイデアに関するエッセイが30年経っても古びておらず、著者特有の分かりやすい文体を楽しむこともできた。




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