日本SF作家クラブの創立50周年を記念して編纂されたアンソロジーの第1作。
1963~72年の10年間に書かれた作品の中から、それぞれの年に1冊ずつ、合わせて10作が収録されている。
福島正実や石川喬司など、作家としてよりも編集者や評論家としての評価や知名度が高そうな人物の作品も入っていて、作品の面白さよりも日本SF作家クラブへの貢献度などを考慮して選ばれたのではないかと思った。
言い換えると、あまり面白く感じなかった。
一方で光瀬龍、豊田有恒、星新一、半村良、筒井康隆といった、日本SFのレジェンドとも言える作家たちの作品は文句なしに面白く、古い作品ということもあまり気にならない。
この中では半村良によるタイムとラベルものである「およね平吉時穴道行」が最も印象に残った。
これは江戸時代に活躍した山東京伝に傾倒した主人公がある奇書を手に入れたことから展開していく作品で、時代考証などの作りこまれた設定が活かされているので引き込まれる。
そして筒井康隆の「おれに関する噂」では、マスコミが報道価値があると判断すれば人の迷惑を顧みずにニュースにしていく一方、マスコミ自身のことなど都合の悪いことについては「報道しない自由」を行使する傾向がある部分を痛烈に描いていて、この時期からあまり変わっていないなと感じた。
時代を感じたのは小道具の他、テレビ番組のスタッフや広告代理店の社員、コピーライターなどが主人公となっている作品が目立つところで、この時期がテレビに影響力があって威勢が良かったのだろうとも思った。
思っていた以上に楽しく読むことができたので、続編も読んでみるつもりである。
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