『ギリシア人の物語I 民主政のはじまり』:雨読夜話

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ギリシア人の物語I 民主政のはじまり
ギリシア人の物語I 民主政のはじまり
塩野 七生
新潮社 2015-12-18

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『ローマ人の物語』などの著作で知られる塩野七生による、古代ギリシア世界の歴史を語った歴史読み物シリーズの第1巻。
本作ではギリシアのリーダー的な都市国家であるアテネとスパルタにおける政治システムの成り立ちや、ギリシア都市国家連合が侵入してきたアケメネス朝ペルシアと2度にわたって戦ったペルシア戦争について語っている。

まずスパルタでは、リクルゴスという人物が政治システムを構築し、それが保守的なスパルタ人の気性に合っていたのか長く続いた話がなされている。

本書を読む前は漠然と王政というくらいのイメージしかなかったが、2人制の王は軍事的な権限しか持たされておらず、実際には市民から選出された5人のエフォロス(監督官)が政治の実権を握っていることが書かれている。

このエフォロスたちは政治的な知識や教養がとぼしいことが多いようで、方針が決まるのに時間がかかったり、明らかに誤った決断をして失敗するケースがいくつも書かれている。

そしてアテネでは民主制が採られ、ソロン、ペイシストラトス、クレイステネス、テミストクレスの4人がそれぞれの時代のキーマンとなって改革を行っている。

ソロンが政治に参加する層を広げ、ペイシストラトスが金融緩和や産業の振興などを行い、クレイステネスが選挙制度を改善、そしてペイシストラトスがペルシア戦争の戦略策定や戦時体制の構築をして勝利に導くという具合である。

ペルシア戦争ではペルシア王のダリウスと次の国王となったクセルクセス、スパルタではレオニダスやパウサニアス、アテネでは前述のテクストクレスの他にミリティアデス、アリステイデス、クサンティッポスといった人物の活躍が描かれている。

第一次ペルシア戦争ではマラソンの語源となったマラトンの会戦、第二次ペルシア戦争ではテルモピュレーの戦闘、サラミスの海戦、プラタイアの戦闘がポイントになっている。

ここではテミストクレスの戦略眼の凄みや、プラタイアで大勝利を収めたのにスパルタのエフェロスたちに警戒されたパウサニアスのかわいそうな末路などが印象に残る。

この時代から民主主義のいいところもダメなところも書かれていて、欠点も多いが他の体制よりは総合的に勝っているという民主主義のシステムについても考えさせられる。

近頃民主主義がどうのとわめく人が古代ギリシアなどの民主主義を引き合いに出すことがあるが、マイナス面について語っていないのは自分の都合のいい部分だけを利用しようという態度なのか勉強不足かのどちらかだと思っている。

著者の作品らしい内容となっていて面白かったので、続編が出たらこれも読んでみたい。





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