織田信長の経済面における、一般的に知られている以上の業績の偉大さを紹介している作品。
城下町をいくつも作り上げて楽市楽座のような政策を取ることで経済的な収益を上げる手法や、上洛時に堺・大津・草津の3港を抑えたことで経済的な利権だけでなく武田や上杉といった東国の大名に経済制裁を加えるカードを得たという部分、信長と敵対した延暦寺や本願寺といった寺社勢力がいかに強大な財力・武力を誇った武装集団だったかなど、信長による政策の先進性がいくつも書かれている。
金銀を通貨として使用することを普及させたのも信長、安土城の有料開放のようにテーマパークのような利用を始めたのも信長、中世のローマ教会のように宗教勢力が過剰に俗界に介入することを抑えたのも信長と、思っていた以上の働きには驚かされる。
敵対勢力との話では、例えば武田信玄の西上は信長の経済制裁で追い詰められたことによるものだったとする説や、信長に焼き討ちをされた延暦寺は高利貸しや有力者の取り込みによる政界工作、武力と宗教的権威を用いた借金の取りたてなどもあって日本有数の金持ち組織だったことが書かれていて、こうした部分を読むと信長の方を支持したくなる。
信長が土豪、国人、寺社などによる中間搾取を排除することで庶民が支払う税を軽減する政策がいくつも打ち出したことで、仕える主君としては恐ろしいとしても民衆からすると暮らしを豊かにしてくれる指導者として支持を受けてきたことが納得できる。
あまり読んだことのない部分での信長の話がいくつも書かれていて、興味深く読むことができた。

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