『「戦国大名」失敗の研究-政治力の差が明暗を分けた』:雨読夜話

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戦国時代に敗者とされる戦国大名などについて、政治学の観点からその失敗した要因と、滅びたりひどい目に遭わないためにはどのような手段が取りえたのかなどを語っている歴史読み物。

5章立てで、武田勝頼、足利義昭、織田家の家臣たち、関ヶ原の合戦で最終的に成功者となれなかった者、大阪冬の陣・夏の陣で滅ぼされた豊臣家関係者がそれぞれ扱われている。

武田勝頼は敗者となったためにイメージが悪いが、客観的に実績を見ると非凡な将だったことがまず語られている。
それが失敗した理由としては、「諏訪四郎」、「伊奈四郎」と呼ばれた一武将から信玄の後を継いだことで信玄時代からの武将からの支持が低く、勝頼側近の武将との対立が影響したことが書かれている。
そして武田家が長篠の合戦で弱体化、上杉家が謙信死後の後継者争い(御館の乱)で弱体化した中では織田・徳川連合あるいは北条家の少なくともどちらかとは関係を良好にしなければならなかったのに御館の乱に介入して北条家と対立してしまったことで、政治的に手詰まりになったことが致命的だったとされ、納得できる。

足利義昭についてはまず、最初は「前将軍の弟」以外に権力も財力も兵力もない状態から、長年謀略一本で戦い続けてきたというしぶとさはすごいという意味のことが書かれていて、イメージは悪いが考えてみれば確かにそうである。
そして義昭の役割を現代の国連事務総長、例えば冷戦期のウ・タントと比較して仲介者としてあまり適性がないとしたり、カンボジアのシアヌーク国王と変節ぶりを比較したりと、かなり面白がって書いているように感じる。

織田家の家臣についての話で印象に残る部分は多くなかったが、信長と柴田勝家の関係を田中角栄と側近だった二階堂進の関係を対比させている部分がちょっと新鮮だった。

関ヶ原の合戦については
  • 豊臣政権のやり方に適応しすぎて自分の勢力を作れなかった石田三成
  • 三成を除くために家康に過大な期待をしてしまった加藤清正や福島正則
  • 本戦に参加できなかったことで貢献が無駄になった真田昌幸
  • 西軍の中心人物だったのに家康にも内応して悲惨な末路をたどった増田長盛
  • 西軍のリーダーだったのにスタッフとしての思考から脱却することができずに著者から「家臣の命をもてあそぶ小器」と非難された毛利輝元
と、政治的な部分から主要人物を語っている。
中には合戦が予定されていた場所で米を買い占めてどちらが勝ってもいいようにして成功した鍋島直茂のような人物もいて、改めて複雑な経過をたどったのだろうと思う。

最後の豊臣家の話では、家康は最初豊臣家が徳川家に臣従して公家のようなポジションに収まることを受け入れていれば滅ぼさなかった可能性がそれなりにあったとして、そうならなかったのは旧豊臣系大名が味方をしてくれるだろうという希望的観測によって現実を受け入れられなかったことがあるとしていて、政治的なセンスのある人材もいなくなったことで家康から翻弄されたことが書かれている。

昨今の政治家の例を引き合いに出すことで戦国武将たちの政治的な動きが分かるような気分にさせてくれ、なかなか興味深く読むことができた。





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瀧澤中 『戦国大名失敗の研究』(PHP文庫)、読了。 お気軽歴史モノのつもりで手に取ったら、 1章1章がガッツリ長くて、結構しんどい読書になりました。 武田勝頼を語るのに、いきなり『ゴッドファーザー』の話から始まるなど、 著者の変化球の味付けが、かなり濃い目についているので、 正直なところ、くどい感じがして、読みづらかったです。 お家の断絶や政権交代に陥ってしまったリ...
2017/04/11(火) | 観・読・聴・験 備忘録