論語抄 (中公文庫) | |
![]() | 陳 舜臣 中央公論新社 2009-08 Amazonで詳しく見るby G-Tools 関連商品 儒教三千年 (中公文庫) 弥縫録(びほうろく)―中国名言集 (中公文庫) 中国傑物伝 (中公文庫) 論語のこころ (講談社学術文庫) 中国の歴史 近・現代篇(一) (講談社文庫) |
陳舜臣による、『論語』の言葉についての解釈や時代背景などを語っているエッセイ。
原文が編集された順に話を進めている。
まずまえがきで、説教調にならないよう気をつけたと書いていて、上から目線や説教臭い文章がいかに読者から嫌われるかを分かっていると好感が持てる。
この種の古典や思想に関する本ではこれが分かっていないのか、分かっていてもどうしてもそうなってしまうのか、そのような書き方になっている人が多いのには辟易させられる。
『論語』が編纂された当時は文字を竹簡や木簡に書き付けていて手間がかかることから、分かりきっていたことを省略しているケースが多かったようで、そうしたところの解釈が分かれがちなことが書かれていて、なるほどと思う。
そしていくつかの学説を紹介していて、漢文だと接続詞のニュアンスが伝わりづらくて複数の受け取り方ができてしまうものだと改めて感じる。
弟子たちの問答については彼らのキャラクターや、『春秋左氏伝』や『史記』などの歴史書で描かれた彼らの活動も紹介されている。
例えば子貢が仕えていた魯の国が隣国の斉から攻められないように呉や晋といった斉のライバル国と外交交渉を行っていたなどの話が書かれていて、孔子の弟子たちが政治の世界で活躍していたことが分かる。
この中では清廉潔白すぎて面白みがない顔回よりも、表裏がなくて感情をストレートに表す子路、才能豊かだがしゃべりすぎの傾向がある子貢、孔子に遠慮なく質問するシーンが目立つ子張などの方が感情移入しやすい。
後世に国教化したり朱子学のように原理主義的になった儒教とは合わないような言動を孔子がしていたり、弟子の派閥によって異なる解釈や話が書かれているなどの類推がされているのも興味深い。
著者らしい丁寧で分かりやすい語り口が読みやすかった。
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