「全世界史」講義 II近世・近現代編:教養に効く! 人類5000年史 | |
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ライフネット生命会長による、世界史を各世紀ごとに語っていく歴史読み物の下巻。
上巻に続いて、15世紀から現在までを語っている。
他の歴史読み物ではあまり読んだことがない事件の捉え方や歴史の流れについての話が多く、随所で目につく記載が出てくる。
例えば、イベリア半島でレコンキスタ(再征服)を完了したスペインではユダヤ系とムスリムを追放したために金融業と農業が打撃を受け、異端裁判によって有能な人が流出して人口減少をを招き、南米の銀が流入していた最盛期ですら何度もデフォルトを起こしている話が印象に残る。
排他主義がいきすぎると国家の衰退を招くいい例であり、当時のスペイン王家だったハプスブルク家はドイツやオランダでも同様の愚策を繰り広げ、婚姻によって勢力を拡大した割に「賢主が出ない不思議な家系」と評しているのが言い得て妙だと感じた。
排他主義の失敗例としてはムガール帝国で宗教に寛容な皇帝が続いた後、6代目のアウラングゼーブが敬虔すぎるムスリムだったために戦争を繰り返して領土拡大をした一方で反乱にも悩まされ、ここからムガール帝国の衰退が始まったことも挙げられていて、人間はどこでも何度でも似た過ちをしてしまうものだと思う。
近代では第一次世界大戦の後にドイツへの憎しみを抑えないフランスがドイツに法外な賠償金を要求してヒトラーの台頭を招いたり、日本では国力を考えたら出来すぎなくらいの勢力拡大をしていたのに悪い情報を隠していたために民衆からの突き上げで妥協ができずに第二次世界大戦での敗北に突き進んでいった話、冷戦下でアメリカが頼ってきたエジプトやキューバを冷たくあしらったために東側になってしまったなど、近い時代なだけによりその重さが伝わってくる。
『フランス革命の省察』の著者であるエドマンド・バークの保守主義の考えを一言で「人間はアホ」として、人間の理性には信頼が置けないので経験や市場でうまくいったことを重視すべきだという話にはなるほどと思う。
著者独自の視点からの話が本書でも多く書かれていて、さまざまなことを考えさせてくれる。

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