人口増加に伴う食糧問題に対して、水産資源を増やすことで対応できないかという観点から書かれている作品。
著者は目指す方向を「100億人がマグロを食べる」という表現で表している。
まず、「漁業の本質は海から窒素とリンを収奪すること」と定義していて、その通りなのだが軽くショックを受ける。
浅い海では魚のえさとなる植物プランクトンの光合成に必要な日光が豊富に得られる一方でミネラルが取り合いになって不足気味になるのに対し、深海では逆に日光がなくて沈殿してきたミネラルが豊富にあるというギャップがある。
このギャップを埋める現象として、地球の自転などによって深海のミネラルを多く含んだ深層水が表層に湧き上がる「湧昇」(ゆうしょう)というものがあり、湧昇が発生するところでは植物プランクトンが増えて魚も増えるという。
ただ、湧昇が発生していても鉄分が少ないと効果が小さいらしく、湧昇が起こっているのに魚が少ない海に鉄粉を撒くという実験を繰り返して確かめられている。
この湧昇を人工的に起こしたり、起こりやすい条件を整えたりすることによって水産資源を増やすという話につながっていく。
簡単にできることではないし、できたらできたで別の環境問題が発生する可能性もあるので今後も研究が進められていくはずだが、今後に希望を持たせるような話がなされている。
世の中で課題を解決する場合にいくつかの解答候補がまま出てくるわけで、魅力的で皆が幸せになれる正解が見つかればいいなと思う。
- 著者の作品について書いた記事
- 『生命の星・エウロパ』
- 『長沼さん、エイリアンって地球にもいるんですか? 』
- 『地球外生命――われわれは孤独か』

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