『論語』から百言百話として、孔子とその弟子たちなどによる200の言葉とエピソードを現代語訳している作品。
現代語訳と読み下し分が併記されているバランスが読みやすい。
(白文は読まないので、私にとっては必要ない)
前半では子路、子貢、顔回など、弟子たちとのエピソードに関する話が多く収録されている。
それぞれの言葉が語られた背景や、他の言葉との関連性についても丁寧に書かれているところに好感が持てる。
中島敦の短編「弟子」に描かれているように元々ごろつきだった子路もそうだが、弁舌にたくみで商才もある子貢なども、孔子に出会っていなければ悪の方で名を知られていたかもしれない。
ストレートに疑問をぶつける子路、ひねった言い回しで孔子に問いかける子貢など弟子たちの個性が出ていて、それに対して孔子が回答の内容や表現に工夫をしているシーンを随所で見ることができる
孔子の御者をやっている弟子はあまり飲み込みが早い質ではないのか、他の弟子がしないような初歩的な質問をあれこれしていて、後世の我々にとっては理解を助けてくれる存在となっている。
孔子に対して農作業のやり方まで聞いているのも、ちょっと面白い。
後半では孔子の「吾十有五にして学に志す」から始まる人生での出来事と関連した言葉やエピソードを、時系列で構成している。
出身国の魯だけでなく、斉、衛、陳といった国々の君主や大臣たちとのやり取りがなされていて、中には陽虎(日本で言えば松永久秀)のような梟雄、衛の南子(素行が悪いとされる君主夫人)、さらには隠者などとの話も収録されている。
孔子の弟子で誰が優れているかという問いをしばしば受けているのは、人材豊富な集団だと評価が高かったためだろう。
言葉やエピソードとの関連性については、本書内の項目番号を振って表示しているのが、ゲームブック(選択肢によって××ページに移動、という形式の読み物)を思い起こさせてもくれて分かりやすい。
『論語』関連の訳書としては構成が整っていて、いい部類に入ると思っている。
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