『資本主義は海洋アジアから』:雨読夜話

ここでは、「『資本主義は海洋アジアから』」 に関する記事を紹介しています。
資本主義は海洋アジアから (日経ビジネス人文庫)
資本主義は海洋アジアから (日経ビジネス人文庫)
川勝 平太
日本経済新聞出版社 2012-04-03

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現在静岡県知事を務める学者による、資本主義や海洋アジアを舞台とした交易が及ぼした影響などについて語った論文をまとめている作品。

以前読んだことがあるような気がすると思っていたら、『文明の海へ―グローバル日本外史』を加筆・再構成したものと書かれていた。
忘れかけていたとはいえ再読に近い形となるので、以前よりも読んで理解が進んだような気がする。

資本主義に関してはマルクスの『資本論』の弱点、例えば制度や人間の行動については書かれていても「唯物史観」という割にものへの記述がなかったり、近代の英国を題材とした関係上もあってアジアなどの軽視や無理解、交易への視点が欠如していることなどを挙げている。

そしてヨーロッパと日本で資本主義が生まれ、その背景としては海洋アジアの存在を挙げている。
ヨーロッパにとってはインド洋というイスラムの海、日本にとってはシナ海(東シナ海、南シナ海)という中国の海を経由して、東南アジアの多島海を舞台とした交易を経験したことが、資本主義の成立に関係していると語っていく。

他にも日本は開国で欧米だけでなくアジア内でも競争するようになったことや、中国の文明圏から独立した日本だけでなくヨーロッパもイスラム圏から「脱亜」してきたという視点、日本とヨーロッパでは経営者の出現するプロセスが異なるという比較など、改めて面白い視点での世界観が書かれていると感じた。

それとともに、以前からうっすらと感じていた著者の文章というか構成のまずさも目につくようになった。
アカデミズムの話を続けたり、著者の体験に話が脱線して戻ってくるまでけっこうかかったりと、かなりテンポが悪くて読んでいて少しイライラした。

学会向けの論文としてはいいだろうが、一般向けの書籍としてはサービス精神が不足しているのか、文章力に難があるように感じる。
ゴーストライターを雇って書き直してもらったり、他の人に解説書を書いてもらうなどすれば、もっと売れる内容だと思うので、つくづく惜しい。

このあたりは静岡県知事としての政策の評判がいまいちなところにつながっていて、学者出身で理念にこだわりすぎる政治家のダメなところが出ているような気もする。

欠点が多い作品ではあるがテーマ自体は興味深く、知的刺激を受けることができた。






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