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『繁栄――明日を切り拓くための人類10万年史』:雨読夜話

ここでは、「『繁栄――明日を切り拓くための人類10万年史』」 に関する記事を紹介しています。
繁栄――明日を切り拓くための人類10万年史 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
繁栄――明日を切り拓くための人類10万年史 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
マット・リドレー (著),‎
大田直子 (翻訳),‎ 鍛原多惠子 (翻訳),‎ 柴田裕之 (翻訳)

早川書房 2013-07-10

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「合理的楽観主義」という考え方から、人類が繁栄するに至ったプロセスを解説している作品。
著者は動物学者で、本書では人類が動物と異なる部分にアクセントを置いて書かれている。

最初は形状や大きさが似ている、打製石器とマウスの違いから話を始めている。
前者がほぼ1人で製作されたのに対し、後者は数多くの人が関わっていることを大きな違いとしてあげている。

ここから繁栄は交換と分業、専門化、そして数多くのアイデアが組み合わされていくつものイノベーションが起こったことを紹介し、人口が増えるごとに集団的頭脳もまた発達したことを語っている。
このプロセスは逆もまた有効で、人口が減るごとに技術が退化していったタスマニア人が例に挙げている。

そしてしばしば「昔は良かった」という話がなされることが多いが、そんなものは生活に苦労しない富裕層の幻想だとばっさり切り捨て、具体的なデータを用いて反論している。
技術の進歩によっていかに悲惨な事態を回避することが出来たかが書かれていて、昔を懐かしむのもほどほどにした方がいいことを再認識させられる。

この手の幻想には原始時代幻想、農村幻想、平等幻想、平和幻想、政府や君主によるコントロール幻想などがあり、これらが支配的になるとろくなことがなさそうである。

世の中の変化によっては混乱が起こる場合もあるが、いきすぎと規制しすぎでどちらの害が大きいかと言うと、後者という趣旨のことも書かれている。
いきすぎはタイムラグがあっても慣習的に解決されることが多いのに対して規制しすぎはそうはいかないことや、「市場の失敗」と「政府の失敗」では後者の害が多いというのもありそうな話である。

今後についても基本的には楽観的な見方がなされているが、全体主義、官僚主義、強大な帝国、多すぎる規制、宗教による制限などが交易を妨げることはいつでも不安要素として存在することも書かれている。
これは共産主義もそうだし、グリーンピースのような環境原理主義も当てはまる。
(本書では遺伝子組み換え作物に強硬に反対したことで、アフリカでの飢餓を助長したことがその例とされている)

例に挙げる話が多くて読むのにかなり時間がかかったが、読み終えるとそれなりに必要な過程ということも理解できた。
少し前に読んだ『「豊かさ」の誕生』などと同様、前向きさと読み応えがあって充実した読書になったと思う。






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