キリスト教が世界史に与えた影響などについて、30章にわたって紹介している作品。
中東で生まれたキリスト教がローマ帝国に伝わり、ローマ帝国の東西分裂によってローマとビザンティンの2つの教会に分かれるなど、教義などをめぐって分化を繰り返しながら世界各地に広まっていったことが書かれている。
中世からはローマカトリックを中心とした記述になっていて、神聖ローマ皇帝(ドイツ王)、フランス王、スペイン王といった世俗の君主たちやイタリアに割拠するさまざまな都市国家と戦ったり協定を結んだりと、教皇領の君主として活動する話も多い。
近代でもナポレオン、ビスマルク、ヒトラー、ムッソリーニといった英雄や独裁者たちとのやり取りも描かれている。
ローマ教皇には優れた人物もつまらない人物も陰謀家もいたわけで、叙任権をめぐる神聖ローマ皇帝との争い、カノッサの屈辱、十字軍、贖宥状など、多くのトピックが出てくる。
堕落していた時代は聖職者の位を売官したり聖職者が妻帯していたなど、聖職者といえども人間だと思わされる部分が多い。
近代以降は植民地支配や大規模になってきた戦争との関わりで苦悩する教皇の姿が多く書かれている。
そしてイタリア人が多く務めてきた教皇もヨハネ・パウロ2世(ポーランド出身)、ベネディクト16世(ドイツ出身)、現在のフランシスコ教皇(アルゼンチン出身)と、イタリア以外の出身者が教皇になっている事象は興味深い。
はたして、ヒスパニックや黒人など有色人種の教皇が誕生する日は来るのか・・・?
ヨーロッパ史と同様にローマ教皇もまたイノケンティスとかピウスとかレオとかユリウスとか、同じような名前の人物が多く登場して覚えられないのが難点なので、別で分かりやすい人物伝みたいな本があれば理解しやすくなるのではないかと思う。
なじみが少なくて初めて知った話が多く書かれていて、ためになった。
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