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『大日本帝国の経済戦略』:雨読夜話

ここでは、「『大日本帝国の経済戦略』」 に関する記事を紹介しています。


明治時代に実施された政策や産業振興、制度改革などを経済的な観点を中心に解説している作品。

教科書などでは欧米に倣って富国強兵政策を採用することで近代化したようなことがさらりと書かれているが、政策には多額の資金が必要だし、江戸時代のシステムからの変更には大きな抵抗があったわけで、これらがいかに大規模な改革で実現が難しいものだったかが分かる。
これは他国が似たようなことを試みて失敗した事例がいくつもあることからも、類推しやすい。

まず、版籍奉還(藩主の廃止)、廃藩置県(藩の廃止)、秩禄処分(士族への給与打ち切り)という一連の政策は現在考えるよりも抜本的な改革だったことが書かれている。
西南戦争のように士族の反乱が頻発したのは秩禄処分が遠因なのだが、大多数の平民から支持を得られるわけがないので、比較的短期間に鎮圧されている。
これも他の国だと、内戦が何年も続いたとしてもおかしくなかった。

また、地租改正は武士の領地とされてきた多くの農地を農民に無償で支給するという大規模な農地解放政策で、戦後の農地改革とは桁が違うものだったことが書かれている。
教科書では農民の負担が増えたようなことが記述になっているが、これも誤りで地租改正によって増産の意欲がましたことで生産高が江戸時代の2倍以上になっているデータには驚かされる。

鉄道建設や電信設備といったインフラ整備もかなり早い段階で実現されていて、しかもほとんどが自国で実施したのが欧米以外の国では初めてで大きな意義を持っている。
これは当時盛んだった帝国主義時代に外資でインフラ整備をすると、例えば清朝の南満州鉄道のように権益を支配されていたことからも、独立を維持するための先人たちの努力には頭が下がる。

他にも総合商社が外国商人のあこぎな商売に対抗して結成された経緯や、伊藤博文が四民平等などのラディカルな政策を次々と実現させたこと、渋沢栄一が大蔵省時代に立ち上げた「民部省改正掛」という改革チームの業績、日清戦争や日露戦争を戦った戦費の捻出、松方正義による日本銀行の設立など、多くの話が書かれていて濃い内容となっている。

特に、松方が金本位制を採用した上での中央銀行としての日本銀行設立には、伊藤や渋沢のような先の見える有識者でさえも反対していた話には、いかに近代の金融システムが理解しにくいものだったのかが感じられる。

明治維新にはいい面、悪い面とさまざまな評価がされるが、ひどい状態になるシナリオはいくらでもあったと思うことを考えると、高い評価をつけることに異論はないと考えている。

戦後に広められた教育ではあまり触れないようにされていた部分が多く書かれていて、非常に読み応えがあった。






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