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『春秋戦国志〈下〉』:雨読夜話

ここでは、「『春秋戦国志〈下〉』」 に関する記事を紹介しています。

安能 務 (著)
講談社 (1992/01)


春秋戦国時代を真っ向から扱った歴史小説3冊のうちの下巻。

田氏による斉の簒奪、趙氏・魏氏・韓氏による晋の分裂などを経て本格的な戦国時代になり、始皇帝による統一までが扱われている。

孟子、荀子のような諸子百家と言われる思想家、張儀や蘇秦など口先で国を動かした遊説家、呉起や楽毅などの名将たち、商鞅のような改革者、多数の食客を登用し国政に影響を与えた戦国四君(孟嘗君・信陵君・平原君・春申君)や呂不韋など、歴史小説の主人公になった人物が多数登場し、人材や思想の面で華やかな時代だったことを再認識できる。

「まず隗より始めよ」、「刎頚之友」、「完璧」、「奇貨居くべし」、「鶏鳴狗盗」など、故事成語になっているエピソードも随所に出てくる。

儒教では孔子に次ぐナンバーツーの扱いをされる孟子については、論争で論理のすり替えのようなことをたびたびやってドン引きされるシーンが書かれ、「白馬非馬説」で詭弁の代表みたいな扱いをされる公孫竜とあまりやっていることは変わらないのに、儒教至上史観から持ち上げられすぎているという趣旨のことが書かれているのが面白い。

後半は秦の天下統一への過程が多く書かれているため、『キングダム』で活躍する人物も多く登場する。
他の歴史読み物であまり目にしたことがなかった、反乱を起こした王弟の成キョウ(長安君)や「山の女王」として描かれる(けどおそらく本当は男性と思われる)揚端和、盗賊団の首領上がりとして描かれた桓キなどの名前が出てくるのでテンションが上がる。

また、『キングダム』には(少なくとも今はまだ)登場していなくて、歴史読み物でもそれほど扱われていないように感じる、尉繚(うつりょう)という人物のことも印象に残った。
この人物は兵書『尉繚子』の著者の曽孫に当たるとしていて、始皇帝に「最高の兵法は兵法を用いないこと」と語り、他国の大臣を買収する戦略を提言し、成果を上げていることが書かれている。
そして始皇帝の恐ろしい部分を察知して逃げようとしたが、引き留められて才能を出させられた形になっている。

「始皇帝が悪く言われがちなのは中国人が本質的に統一や整った支配を好まないから」という趣旨のことを書いていたり、尉繚が提言した買収工作は現在の国際社会でもやっているお家芸だと感じたりと、なかなか読み応えのある作品だと感じた。
本書は20年近く前の作品ではあるが、再販しても売り方によってはそれなりに売れる可能性があるのではないかとも思う。





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