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『外来種は本当に悪者か?: 新しい野生 THE NEW WILD』:雨読夜話

ここでは、「『外来種は本当に悪者か?: 新しい野生 THE NEW WILD』」 に関する記事を紹介しています。

フレッド ピアス (著), 藤井 留美 (翻訳)
草思社 (2019/6/6)


外来種の問題はこれまで多く語られてきたが、その外来種が在来種とうまく共生したり、外来種を駆除したら在来種も減ってしまうなどの影響があるなど、外来種が新たな生態系を作る役割も果たしているので、単純に外来種を駆除すべきというのは早計だという話を語っている作品。

テレビ東京で放送されている「池の水をぜんぶ抜く」でよく見られるカミツキガメやアリゲーターガー、ブラックバスやブルーギルなどの被害は有名だし、本書でも例えば日本由来の植物で園芸や緑化の目的で栽培した結果大変な被害を受けている葛(クズ)やイタドリの話も扱われている。
イタドリをヨーロッパに持ち帰ったのがシーボルトという話も知らなかったので少し驚いた。

そうした外来種の問題がある一方で、南大西洋にある孤島は比較的できたのが新しいこともあって在来種は植物が少し生えているだけだったのが、渡り鳥などによって持ち込まれたり人が持ち込んだ外来種が繁殖した結果、緑豊かな山の中に多様な生態系が出現した話もしている。

そもそも、「あるべき元々の自然」というものは想像上のものにすぎず、例えばアマゾンにある原生林と思われてきた場所も実はかつて人間が伐採や植物の栽培をしていたことが判明しており、常に生態系は変化を続けている上、多数派を占める生き物も何か理由があってというよりも「たまたま」そうなっているらしい。

そのため、大きな被害が出ているわけでもないのに在来種のみの環境に戻すという取り組みは掛けた費用や労力の割に効果が小さい上、その結果できた環境は「手つかずの自然」ではなく結局のところ「人の手を加えた自然」の1種でしかないという趣旨の話は印象に残る。

外来種が異常発生するのはその種に原因がある部分よりも、その環境をすでに人間が破壊していたためにその空白に入り込んだだけ、という話は分かりやすいし、工場の跡地や廃坑、チェルノブイリのような場所で多くの外来種が繁殖している例も挙げている。

もっと驚くのが、アフリカのサバンナにライオンやシマウマなどがいる自然は昔からのものと思われているが、実はイタリア軍が持ち込んだ牛疫をきっかけにツェツェバエが大発生し人と牛が住めなくなった結果としてできた生態系だという話で、幻想がぶち壊されたような気になってしまった。

在来種ももしかすると単純に外来種が長く住んでいただけということもあり、現在のように人が様々な種を移動する時代を「人新世」とも呼ぶらしい。
著者はこの外来種が生態系の豊かさに寄与する自然を「ニューワイルド」と呼び、ありのままではなくいかに豊かな自然としていくかが求められるというのが趣旨のようである。

確かに農産物や家畜も多くは外来種なわけだし、学者ではなくジャーナリストということもあってか趣旨が明確で納得しやすい内容だった。
例が多く書かれていてなかなか次に進まないと感じる部分もあったが、これは必要な例示ということだろう。

昨年読んで読みごたえがあったのが『銃・病原菌・鉄』で、今年は本書がそれに当たるかと思う。




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