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『皇帝たちの中国史』:雨読夜話

ここでは、「『皇帝たちの中国史』」 に関する記事を紹介しています。

宮脇淳子 (著)
徳間書店 (2019/12/13)


皇帝たちを切り口にして中華思想による捏造からできるだけ離れた形で書かれた中国史に関する歴史読み物。

著者の夫である岡田英弘著『中国文明の歴史』で書かれていた歴史観から、より具体的な話がなされている。

中国では昔から周辺の異民族を蔑む考えが強いが、例えば三国志の時代に戦乱で人口が十分の一に減ったことで北方からの遊牧民出身の人々に入れ替わるなど、新しく中原に入ってきた人たちが昔から周辺にいた人たちをバカにする構造が繰り返されていて、地方から東京に住んでそれほど長くない人たちが田舎の人をバカにする話と少し似ている。

そして中華思想に染まると堕落して軍事的に弱くなって北方の遊牧民の国から攻められるのもお決まりのパターンとなっていることや、遊牧民の王朝の方が名君が多くて「漢民族」の王朝では偏狭な思想に凝り固まった暗君が多いのも中国の歴史読み物を読んでいて納得しやすい。

漢の武帝は領土を広げた一方で人口を半減させて財政を破綻させた暴君という評価、前漢初期の郡国制は郡県制にできなかったことの言い訳、日本でうまく運用できなかった律令制は本家の唐王朝でも徹底できていなかったなど、司馬遷をはじめとする中国の歴史家たちがごまかしてきた話を書いているのが印象に残る。

また、表意文字の漢字は発音が違う人々の間でニュアンスは伝わる利点がある一方、それだけだと学習できずにアルファベットなどの表音文字(日本だとかな)の補助が必要という欠陥、中国やロシアによる地元の歴史や言語を教えさせない政策によって例えばモンゴル人がチンギス・ハンのことをあまり知らなくて日本人に教わる現象、明代に造られて現代に残る万里の長城があまり役に立たなかったらしいことなど、あまり知られていないと思われる話が多く書かれている。

重くて強烈な話が多いが、それだけに読みごたえもある。




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