宇山 卓栄 (著)
KADOKAWA (2015/11/20)
宗教・経済・世界史の3分野の関係性を分かりやすく解説している作品。
まず、神様や宗教は「利害調整機能である」と、身もふたもない表眼が書かれていて印象に残る。
そして、宗教はトマス・ホッブズの言う「万人の万人に対する闘争」の状態を避けるために生み出されたと書かれていて、確かにそういう面があると徐々に理解できていく。
そして、宗教がらみの紛争は教義をめぐる争いというよりも、利害対立に宗教が大義名分として利用される場合がほとんどとも語っていて、宗教戦争が一気に俗っぽい印象になっていく。
これは紛争を起こした指導者の話で、引きずられた人々の立場はまた異なるのだろう。
こうした宗教と経済が関連した例としては、十字軍でのサラディン(サラーフ・アッディーン)とリチャード1世の戦いが分かりやすい。
サラディンはイスラム世界をまとめるためにイスラム商人たちがスポンサーとなって担ぎ上げられたものの、十字軍との戦いを本格化させようとしたところ、交易に支障が出るために融資を打ち切られてしまうという、現代で政治家と企業の関係みたいな話が書かれている。
また、ローマ教会が発行して宗教改革の一因となった免罪符(贖宥状)も、イタリアでは胡散臭いことが分かったのかあまり売れなかったという話が書かれていて、知らなかった話で少し驚いた。
売れるようになったのはドイツでホーエンツォレルン家(後のプロイセン王室)が一族からマインツ大司教を出すための資金集めに利用されてからということで、現代で言えば政治家が献金集めのパーティ券を販売するのに近いと感じた。
他にも、ヨーロッパで資本主義が盛んになったのはプロテスタンティズムによるものというマックス・ヴェーバーの説に対して、プロテスタンティズムを利益追求の免罪に使い倒されたというトーニーの説や、イスラム教の教義解釈「イジュティハード」を10世紀に固定化したために近代化に乗り遅れたことなど、初めて知った話が多い。
古びにくい内容の話に知見が広がったような気がして、興味深く読むことができた。
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