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『逆転のイギリス史 衰退しない国家』:雨読夜話

ここでは、「『逆転のイギリス史 衰退しない国家』」 に関する記事を紹介しています。

玉木 俊明 (著)
日本経済新聞出版 (2019/7/13)


経済や商業、貿易、物流、財政などの観点からイギリス史を語っている作品。

ローマ帝国や北欧の強国、フランスなどの一地方だった時代から辺境の島国となった時期、そして7つの海を支配する大英帝国の時代を経て、ヨーロッパの一員からブレグジットにより再び島国に戻りつつあるという歴史観で語られている。

経済で言えば毛織物工業において対岸のアントウェルペンやアムステルダムの下請けみたいなポジションだった時期も長く、原料や中間財の輸出国というだけで従属関係にあるのではなく、販路が限られていることがポイントだという話が印象に残る。

イギリスの前にヘゲモニーを握っていたのがオランダで、オランダが自由な商人たちの活動によって栄えていたのに対し、イギリスは国家が後押ししての支配を進めていた話に続いていく。

オランダから覇権を奪った要因にはクロムウェルによる航海条例があり、これはイギリスから中間貿易を行うオランダ船を締め出すことで海運業のシェアを奪うことを意図していて、複数回にわたる英蘭戦争も発生している。

また、人口や財政規模でイギリスより上だったフランスとは第二次百年戦争、フランス革命戦争、ナポレオン戦争など長らく戦い続けて勝利するわけだが、著者は要因として両国の税制と財政制度を挙げている。

イギリスは消費税の割合が大きくて経済成長に応じて税収を上げることができたのに対し、フランスは地租=固定資産税の割合が大きくて税収が上がらなかったこと、そしてイギリスが国王と議会の対立や南海泡沫事件などを経て国債制度を早く整えることができたことが書かれている。

そして産業革命や「世界の工場」と呼ばれたことから製造業が大英帝国を支えたと思われがちだが、実際には海運や通信、海上保険、金融業などによる部分が大きく、手数料収入で潤った話が書かれている。

また、世界の各地に築いた植民地から構成される「公式帝国」だけでなく、海運力でつながった「非公式帝国」の多さも指摘されている。

こうした帝国は維持コストがかかるために第一次世界大戦(著者は三十年戦争、フランス革命・ナポレオン戦争に続く「第三次欧州大戦」と呼ぶ)によって次のアメリカに覇権を明け渡すこととなり、アメリカの支配構造にも言及されている。

その後、第二次世界大戦後に福祉国家を志向した結果として「イギリス病」に陥ってからマーガレット・サッチャーによる改革、インターネットの普及、リーマンショック、ギリシア危機、ブレグジットと現代の話に続いている。

イギリス史でよく出てくる、海賊や外交、ドロドロした謀略などの話があまり出てこないのが新鮮だし、世界史で必ずしも意識するとは限らない産業や物流、産物などの話が多く書かれていて、興味深く読むことができた。




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