ルートポート (著)
KADOKAWA (2019/2/1)
会計、つまり他人とのお金やモノの交換や貸し借りの記録が文字よりも先にできていたという話から、現在の会計制度ができるまでの経済の流れ、そして今後の見通しまでを長期的な観点から解説している作品。
メソポタミア文明でクサビ形文字が使われていたのは有名だが、それよりも前からトークンと呼ばれるモノをかたどった小さな粘土製品が大量に出土していて、これが会計の初期のものだという話にまずインパクトを受ける。
そして、絶対的な君主がいない中世イタリアの都市国家でイスラム圏から伝わったアラビア数字を用いた帳簿がつけられるようになり、さまざまな改良が加えられていくこととなる。
ヨーロッパとは無関係に、実は日本でも江戸時代に商家などでこの手の帳簿がつけられるようになっていたそうだが、企業秘密にされていたために広まることがなかったのは当時の事情があって仕方ないとはいえ、残念に感じた。
ヨーロッパの中世から近世・近代にかけて東インド会社から始まる株式会社や株主総会、オランダのチューリップバブルやイギリスの南海泡沫事件といったバブル崩壊、イギリスの産業革命が人件費の高さとエネルギー費用の安さが背景だったことなど、会計だけでなくそれを取り巻く経済的な背景が分かりやすく書かれている。
数式やモデルをあまり用いず、歴史や会計が苦手な人でも読みやすくする工夫が随所に施されていて、興味深い話を分かりやすく読むことができた。
テーマが近くて積読になっていた『会計の世界史 イタリア、イギリス、アメリカ――500年の物語』も読もうと思う。

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