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『ヨーロッパ炎上 新・100年予測 動乱の地政学』:雨読夜話

ここでは、「『ヨーロッパ炎上 新・100年予測 動乱の地政学』」 に関する記事を紹介しています。

ジョージ・フリードマン(著), 夏目 大(訳)
ハヤカワ文庫NF
2017年04月20日


以前読んだ近未来における紛争を予測した『100年予測―世界最強のインテリジェンス企業が示す未来覇権地図』の著者による、ヨーロッパでの紛争の歴史と今後に紛争が再燃しうる地域などについて語っている作品。

現代が『FLASHPOINTS The Emerging Crisis in Europe』(発火点 ヨーロッパに潜在する危機)というもので、前作が売れたからと邦題に「新・100年予測」と入れているのはあまり内容に合っていない。

著者はハンガリー生まれのユダヤ系で、父親はハンガリー軍に枢軸国側としてソ連軍と戦ったことや、ユダヤ系ということで迫害を受けたこと、共産化しつつあった故国から一家で必死の逃亡を続けてアメリカに亡命したことなど、かなり重い過去が書かれている。

皆が平和に暮らしていた時期が一変する経験から、著者の父親はヨーロッパの人々の対立について「なくなることはない。なくなったことにするだけ」と痛烈なコメントをしていることが書かれている。
「なくなったことにする」というコメントからは、自らが不利になるとルールを改変してを他国に押し付けてきたことや、ローマ教会が販売した罪をなかったことにする免罪符(贖宥状)、現代の二酸化炭素を出さなかったことにする排出権取引、トヨタの自動車用エンジンに勝てないからとEVを推進して内燃機関をなかったことにしようとした話などを連想した。

1914年の第一次世界大戦勃発から1945年の第二次世界大戦終結までの一連の戦争によってヨーロッパはボロボロの状態となり、米ソの支配を受けてきた冷戦期、その後のEU統合の試みとその矛盾が出た話、各地域における対立の再燃などの話がなされている。

地域としてはEUにおけるドイツと他国の経済格差に伴うトラブル、国力と発言力が低下したことに焦るフランスと歴史的経緯から警戒されるドイツの事情、歴史的経緯から紛争解決の道が見えづらいバルカン半島とコーカサス地方、周囲を紛争地帯に囲まれてクルド人やアルメニア人との問題も抱えるトルコ、ヨーロッパの混乱に巻き込まれたくないイギリス、緩衝地帯をヨーロッパ側に取られていると感じるロシアなど、紛争の原因となる話がいくつも書かれている。

本書が書かれたのが2015年でその後にブレグジットやロシアによるウクライナ侵攻などがあり、本書で危惧されてきた話が現実にもなっている。
重い話が多いが、それだけに読みごたえもあった。





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