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『天然ガスが日本を救う 知られざる資源の政治経済学』:雨読夜話

ここでは、「『天然ガスが日本を救う 知られざる資源の政治経済学』」 に関する記事を紹介しています。
天然ガスが日本を救う 知られざる資源の政治経済学
天然ガスが日本を救う 知られざる資源の政治経済学
石井 彰
日経BP社 2008-09-10

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日本のエネルギー問題において風力や太陽光、バイオマスについてはしばしば論じられるが、地味さや従来の産業構造などにより軽視されがちだった、天然ガスというエネルギー資源についてその可能性を論じている本。マスコミの論調と違ったことが多く書かれていたので、興味深く読み進むことができた。

欧米やロシアなどでは天然ガスによる発電はかなり普及しているが、日本では利用の割合がかなり低く、石炭による発電を天然ガスに代替することで、京都議定書で目標とされたCO2排出量の削減を達成できるとしている。

さらに、石油と異なり従来型の天然ガスがロシアや東南アジア、オーストラリアなどに大量に眠っているほか、メタンハイドレードやバイオガスなど新エネルギーとして期待されるものもあるなど、安定供給も期待できるようだ。

まず、天然ガスの特質としては以下のような点に代表される。

  • CO2排出量が石炭の約1/3
  • バイオ燃料と比較すると、CO2排出量は大差なく、食糧危機の問題がない分天然ガスの方が優れている
  • 運搬に高度な技術と莫大な費用がかかる
    →陸上ではパイプライン、海上ではLNG(液化)が利用される場合が多い
  • 油田でも採取できるが、本当に大量に埋蔵されているのはさらに深い部分
  • エンジンの小型化が難しいため輸送機器向けではなく発電に向いている。
  • コジェネレーション(電熱併給:発電で生じた熱をさらに発電に利用する方法)と相性がいい

そのため、

  • 代替相手の石炭などと競合しやすいために、コスト変動がすぐに需要に影響する。
  • 大規模な投資を必要とするため、EUとロシアの関係のように一度需給関係が軌道に乗ってしまうとお互いにいい関係を続けざるを得なくなる
  • 石油に比べて市場が成熟していないため、EU、ロシア、中国、中央アジア諸国など、資源の価格をめぐる地政学的な駆け引きが盛んに行われている。
など、天然ガス独自の現象も起こっていて興味深い。
特に、地政学的な駆け引きについては経済小説にすればかなり面白そうだった。

日本で天然ガスの利用が少なかった背景としては、

  • 輸送の問題により、LNG受け入れ基地がほとんどで数も少ない。
  • 電力会社とガス会社、石油会社が別になっており、ガスを扱う大企業が少ないという産業構造のため、他国よりもさらに石油や石炭と競合しやすい
という事情があったようだが、これは逆に考えると利用余地が大きいということでもあり、石炭から天然ガスへの移行が進めば実際にCO2削減が現実的にできそうな気がしてきた。

日本で天然ガスの利用を進める方策として考えられるのは、

  • サハリン周辺に大ガス田を抱えるロシアからのパイプライン計画の推進
  • 国内に天然ガスパイプラインの整備
  • 自前でのガス田の開発
  • 洋上LNG基地の構築
  • 合併等による天然ガス関連の大企業の設立
あたりになりそうである。

これまであまり考えたこともなかった天然ガスの可能性がいくつも書かれており、期待を抱かせるような内容だった。

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