『アメリカ素描』:雨読夜話

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アメリカ素描 (新潮文庫)
アメリカ素描 (新潮文庫)
司馬 遼太郎
新潮社 1989-04

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司馬遼太郎がアメリカ合衆国を旅しての考察を述べた文明論的なエッセイ。
読売新聞に連載されていたそうで、第1部はカリフォルニア州で、第2部は東海岸諸州での体験をつづっている。

文明と文化の違いという視点に大きなウエイトを置いており、普遍的なものが文明で不条理さが高く普遍性の低いものが文化といった意味で使用されている。
アメリカは移民が多くを占めている国で、文化の蓄積が当初人種によって異なっていたことを背景として、普遍的な文明という面が大きいといった書き方がなされている。

いわゆる名所旧跡のたぐいよりも、実際に普通のアメリカ人に会って話すことに重点を置いて訪れたようで、ロビイスト、ゲイ、アイリッシュ、黒人、WASP、弁護士などアメリカ社会を構成する人々との出会いからの考察が豊かになされている。
特に、奴隷として連れて来られた黒人(アフロアメリカン)の場合は継承してきた文化がほとんどなかったため、彼らこそが生粋のアメリカ人ということになるのではないかとしているところが興味深かった。

後半ではウォール街や打ち捨てられた工場跡、ブロードウェイなどを見て、金融工学の発展やアメリカが古い製造業から撤退している経過、そして韓国人の進出などを考察していたが、本書が書かれた後、これらがどれも大きな出来事になっていることにアメリカの変化を感じた。
サブプライムローン問題などに代表されるアメリカの金融危機の他、製造業らしさを失ったためか破綻に危機にあるビッグ3といった最近のニュースだけでなく、92年のロサンゼルス暴動で黒人が韓国人の商店を襲った事件も思い起こした。
ここでは韓国人が日本による併合のため移民が遅れたことが、逆に金を持った状態で行くことができたため成功したとあった。もしかすると、後で移民した民族が先に住んでいる民族から差別の洗礼を受けること(これ自体はいいことではないが)が少なかったためかもしれないと思った。

他にも法の支配の厳密さや儲けることがアメリカ外交にもたらす重要性、小村寿太郎など明治日本とアメリカとのつきあいなど、示唆に富む内容がいくつも書かれていて興味深かった。
読み出したあたりでは普通の人と会うところばかり出てきてつまらないと思っていたが、先を追って読んでみるものである。



[アメリカについて書かれた文明論的なエッセイ]
アメリカとアメリカ人―文明論的エッセイ (平凡社ライブラリー)
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