擬人化されたカエルやウサギ、妖怪化した楽器や食器などの道具類、そして鬼など妖怪変化が描かれた絵巻物の謎について考察がなされている本。
絵柄に興味を持ち、ネットで注文したものの出版社の在庫切れということでキャンセルされたため、書店に出かけて購入した。先月出版されたばかりであることを考えると、かなり売れているのだろうか。
こうした絵巻物の存在自体よく知らなかったが、平安期から室町期にかけてオリジナルが描かれ、江戸時代にブームだったり練習用の題材に扱われたりと描き写されたものが各地に残っているらしい。
こうしたそれぞれの絵巻物の種類を分類し、細かな相違などから関係などを考察している。
実のところ絵巻物の関係性はいまひとつピンと来なかったが、妖怪たちの微妙な違い(妖怪が烏帽子をかぶっているか、あるいは頭がタコになっているかなど)がカラー写真を挙げて描かれているのが面白い。
百鬼夜行絵巻同士だけでなく、『鳥獣戯画』や中国の『山海経』など他の絵巻物から受けたと思われる影響にも描かれている。
そして著者はカエルやウサギなど動物が擬人化されているだけなら戯画なのに、魚介類や道具類が擬人化されるとなぜ妖怪になるのかなどと疑問を呈し、以下のような見解を示していて納得しやすい。
- 動物の場合は直立して服を着せれば違和感が少ないのに対し、魚介類や道具類に手足や顔をつけるとどうしても妖怪然とした形状になる。
- 絵巻物に人間が登場すると、明らかに妖怪の絵巻物になる。
絵だけでも満足できる内容で、手元において折に触れ楽しみたい一冊だと思う。
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