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『孫子 (講談社学術文庫)』:雨読夜話

ここでは、「『孫子 (講談社学術文庫)』」 に関する記事を紹介しています。
孫子 (講談社学術文庫)
孫子 (講談社学術文庫)浅野 裕一
講談社 1997-06

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中国の代表的な兵書である『孫子』について、現代語訳、読み下し文、白文、解説と親切な構成で書かれている本。

著者によると現在広まっている『孫子』は宋代以降に書写されたものらしいが、1972年に前漢時代の竹簡に書かれたものが発掘され、本書では主にこれを元にしている。
これにより新たな発見や、後世の人によって付け加えられたり誤読されていたと思われるところが修正されているようなところが非常に好感が持てる。

例えば4章の「形篇」で攻守について述べたところでは、従来は兵力が優勢なら攻撃により重きを置くべきといった形に曲筆されてきたのが、実際は以下の理由により守備を固めることの方が重要としているのが興味深い。
  1. 守備は自己の努力で実現可能だが、攻撃が成功するかは不確実
  2. 自軍の攻撃で勝利するより、敵軍の攻撃により敗北しないことが先決
  3. 守備の方が戦力に余裕が生じる有利で強力な形式
これは自軍をしっかり維持し、敵の失策を待ったりうまく誘い出してから叩く形での積極的守備を語っており、横綱相撲やサッカーでのカウンター戦術みたいなものがイメージできた。
西欧近代兵学の代表的作品である、クラウゼヴィッツの『戦争論』でも孫子を曲筆した人々と同様に攻撃重視スタンスのようであり、2000年以上前にこうした軍事思想を語っている孫子の凄みが感じられる。

また、”奇”という言葉で表される戦術がこれまでは奇策を編み出すことのように思われてきたが、これも敵軍とは異なる種類の軍を繰り出したり戦術を実施するという意味で、あくまで現実的な手段に基づいての方法論を語っているようだ。

地形や兵の種類、兵站など時代がかった部分も少しあるが、基本的な考え方としては読むほどにリアリズムが感じられてくる。
これまで読んだ『孫子』関連の本では最もしっかりした構成の本だと思う。


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この記事へのコメント
> とおりすがり さん

私も奇正と攻守については、他の孫子解説本にない解釈だったと思います。
浅野さんの解説は思想家の弱点も突いていたりするのが面白いです。
2011/05/01(日) 10:44 | URL | ufit #-[ 編集]
奇正の解釈についてこの本以上に納得できる解釈本を見たことがない。
2011/05/01(日) 02:34 | URL | 通りすがり #pwutJTUc[ 編集]
昨年後半から先秦時代の中国の思想書が面白くなり、断続的に読み続けています。
特に兵書や法家の思想だとリアリズムに徹したところがあり、現代でも十分通用する内容なのがいいです。今は『三略』という作品を読んでいて、掲載することになると思います。
2009/07/09(木) 21:15 | URL | ufit #-[ 編集]
孫子に関しては、海音寺潮五郎や宮城谷昌光さんなどの小説は読んだことがありますが、翻訳はないですね。こんなに沢山の文庫版が出ているんですね。孫ピンの復讐の話など非常に面白い話が満載ですから、私も買って読んでみたいと思います。
2009/07/09(木) 05:06 | URL | 源さん #KaAtrgIE[ 編集]
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