fc2ブログ

『黒いスイス』:雨読夜話

ここでは、「『黒いスイス』」 に関する記事を紹介しています。
黒いスイス (新潮新書)
黒いスイス (新潮新書)
福原 直樹
新潮社 2004-03

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

関連商品
物語 スイスの歴史―知恵ある孤高の小国 (中公新書)
スイス探訪―したたかなスイス人のしなやかな生き方 (角川文庫)
スイス的生活術―アルプスの国の味わい方
ブランド王国スイスの秘密
スイスと日本 国を守るということ -「永世中立」を支える「民間防衛」の知恵に学ぶ

永世中立国、平和な国、美しいアルプスの山々、国民皆兵、銀行業が盛ん・・・といった憧れの美しい国というのが一般に持たれているスイスのイメージだろう。

しかしどこの国にも暗部はあり、本書では国家ぐるみでのジプシーの子供の誘拐から、第2次大戦時にナチスドイツからのユダヤ人難民を送り返していた事実、そして核兵器の計画に銀行でのマネーロンダリングといったこれまであまり触れられてこなかった部分を新聞記者の視点から描いている。

印象が強かったのはユダヤ人難民を追い返した部分である。スイス政府はユダヤ人難民の増加に苦慮したあまりナチスドイツに対してユダヤ系ドイツ人のパスポートの表紙に大きくユダヤ人を表す” J ”のスタンプを捺すように要求してこれをもとにユダヤ人難民を追い返していた。
当時の事情でやむを得ない部分があったかもしれないが、ナチスによるユダヤ人の大量虐殺を知ってもこれを続けていたわけで、やりすぎだろう。

また、この国は住民による監視や密告が盛んなことも書かれており、外国人や左寄りと見なされた人物はプライバシーなど認められないようなほど様々な情報が流出してしまう。警戒心の強い国民性のようだ。
インターネットの普及などで個人情報の流出に対して、日本では来年の4月から個人情報保護法が施行される。
スイスではこの個人情報保護法など、とても実施できないだろう。

あと、スイスの銀行ではこれまでマネーロンダリング(不法なカネの出所を分からなくする)が行われてきており、マルコスやスハルト、ミロシェビッチなど各国の独裁者や犯罪者のカネの隠し場所となってきた。
最近は9.11後のテロ対策などでだいぶ取り締まりが厳しくなってきたようだが、スイスの法律では税金の申告漏れ、つまり脱税はそれほど厳しく取り締まらず、この行為により不正に取得されたカネは今も預金され、その秘密も守られてしまっているという。

ドイツ、フランス、イタリア、オーストリアと強国に囲まれた小国なだけに、きれい事だけではやってこれなかったというわけなのだろう。




にほんブログ村 本ブログへ
スポンサーサイト




この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック
福原直樹 『黒いスイス』(新潮新書)、読了。 なんだか皮肉なタイトルを見て即買い(苦笑)。 「スイス」というと、「きれいな自然に囲まれた観光立国」「時計などの精密な工業力」 「永世中立国としての平和貢献」みたいなイメージがあり、クリーンな感じがしますが、 それが黒いというのです。 「はじめに」から、スイスの実態として、 (1)核配備を計画していた過去がある、 (2)政府の援助のもとでロ...
2023/07/12(水) | 観・読・聴・験 備忘録