『マネー・ボール 奇跡のチームをつくった男』:雨読夜話

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マネー・ボール 奇跡のチームをつくった男
マネー・ボール 奇跡のチームをつくった男
マイケル・ルイス (著), 中山 宥 (翻訳)
ランダムハウス講談社 2004-03-18

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決して資金が潤沢ではないメジャーリーグのオークランド・アスレチックスが、ゼネラル・マネージャー(GM)であるビリー・ビーン氏を中心とした改革によって強いチームに変貌する過程を描いたノンフィクション。

基本的に野球のスカウトが重視するポイントとして足/肩/守備力/打撃力/長打力の5つが挙げられ、高校時代のビリーはそれらの全てを兼ね備えて将来を嘱望されていたが、性格が向いていないこともあったのかプロ入り後はパッとしない成績に終始し、早い時期に引退した。
この経験が、ビリーがアスレチックスのスカウトからGMに出世してから活かされることになった。

GMになったビリーはハーバード大卒のインテリをGM補佐に起用し、徐々に広まりつつあったセイバーメトリクスという数値データを用いた野球分析の手法を用い、勝利に直結する要素を洗い出すという作業を行わせた。

すると、
  • 勝利に占める割合が高いのは攻撃で、投手力や守備力はこれに劣る
  • 攻撃で優位なデータは打率ではなく四死球を含めた出塁率で、長打率は投手にプレッシャーを与えて四死球を誘う効果があるのでこれも重要
    (日本のプロ野球では、四死球を選びまくる東京ヤクルトの”魔将”ガイエル選手などがいい選手の典型例に当たりそうである)
  • 野球というゲームはアウトになることをいかに遅らせるかが重要で、その意味では犠打や盗塁などはリスキーな割に効果が低い
  • 打球、特にゴロがヒットになるかどうかは運による要素が強く、奪三振/与四死球/被本塁打/被長打率などはある程度まで投手自身でコントロール可能だが、防御率はコントロールできない
など、一般の印象とは大きく異なる結果が導き出された。

この結果を受けて、ドラフトでの選手のスカウトやトレードといった補強戦略、そしてベンチワークも監督に対してこと細かく指示を行うことにした。
例えば上記の出塁率が高い選手であれば肩が弱い、足が遅い、太っている、守備がひどいなど第一印象でマイナスとされる特徴のある選手をドラフトで指名したり、2軍にくすぶっていれば保障選手のふりをして獲得する他、他球団同士のトレード情報にも注意して一枚噛んで(アスレチックスから見て)いい選手を獲得するチャンスをうかがうなど勝率を上げるための多くの手段を矢継ぎ早に実施していった。

ただしビリーも元野球選手で基本的には熱い人物であるため、こうした方法を実践するポイントとしては野球観戦をしすぎないことを心がけている。
これは野球が面白いことや実際に見た印象とデータでは差が大きいことによる他、上記のポイントを重視した野球ではエラーが多くなったり盗塁やサインプレーなどエキサイティングなプレーが少なくなるなど、地味でつまらないけど勝つという野球になりストレスがたまるからだろう。

当然ながら選手や監督、スカウトなど現場からの抵抗は大きかったが、ビリーが強権で押し通していった結果、プレーオフ進出の常連になるなどアスレチックスは確実に強くなっていく。
他球団でもまぐれや例外だとするところも多い中、ビリーやその部下たちを引き抜こうとする球団が出てくるなど徐々にだがビリーの手法が認められるにもなってきていることが書かれている。

ビリーや部下のスタッフが旧来の固定観念にとらわれた人々に対して苦闘するシーンや、セイバーメトリクスを考案した人物の話、ビリーによってアスレチックスで活躍の場を与えられた選手の描写などが書かれていてぐいぐい引き込まれる。

単なるノンフィクションとしてだけではなくビジネス書や科学的な考え方の勧めなど多くの読み方をすることも可能であり、大当たりの本だったと思う。


[本書の文庫版]
マネー・ボール〔完全版〕 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)マネー・ボール〔完全版〕 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

マイケル・ルイス (著), 中山 宥 (翻訳)
早川書房 2013-04-10

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2009/10/05(月) | itchy1976の日記