『オイルマネー』:雨読夜話

ここでは、「『オイルマネー』」 に関する記事を紹介しています。
オイルマネー (講談社現代新書)
オイルマネー (講談社現代新書)
畑中 美樹 (著)
講談社 2008-12-17

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

関連商品
まるごとわかる中東経済
歴史と外交─靖国・アジア・東京裁判 (講談社現代新書)
大貧困社会 (角川SSC新書)
ビジネスチャンスは中東にあり!
外交の力


政情が比較的安定していて欧米との関係も悪くないGCC諸国を中心に、オイルマネーのこれまでとそれらを背景とした政府系ファンドの種類や戦略について紹介されている本。
※GCC:湾岸協力機構のことで、サウジアラビア、UAE、クウェート、オマーン、カタール、バーレーンの6カ国で構成されている。

中東諸国も金融危機で相応に多大な損失を被っているが、
  • オイルショック時のバブルで浪費を行った反省から手堅い経済運営を心がけてきたこと
  • 一旦欧米に流れていたマネーが還流していること
  • 採掘が容易な油田が枯渇しつつありイージーオイル(原油安)の状態が望めなくなってきていること
などから、まだまだオイルマネーの実力は健在とされている。
本書に書かれている以外に思い当たる要因としては、商業と相性のいい地域であったことや、イスラム金融の概念がこれらの国で金融資本主義の暴走を抑える役割を果たしたのではないかとも思っている。

欧米を中心とした各国からは金融危機を救う救世主としての役割を期待されている反面、イスラム圏ということもあって欧米の戦略上重要とされる産業(金融、軍事、港湾など)の企業への投資は警戒されている部分もあり、中東各国もその辺りは分かっていて慎重に投資を行っていることが書かれている。

反対に中東諸国から見て、欧米へのスタンスもお買い得と見て積極投資を行う国(アブダビやカタール)からまだまだ損失は拡大し続けると見て投資に慎重な国(クウェート)に分かれており、それぞれの事情も垣間見えてくる。

日本との関係については、代替エネルギーや食糧での協力の他に、アフリカへの投資における協力を推進していくことを提言しているところが印象に残る。
アフリカについては植民地時代から関係の深いヨーロッパやなりふり構わぬ強引な進出の目立つ中国と比較すると、日本は後手に回っていて単独で参入するのはなかなか難しいようなことを考慮すると、地理的に近いことやイスラム教国も多いなど関係の深い中東諸国と組んでのアフリカ投資は理にかなっていて期待できるのではないだろうか。

他には中東諸国の改善した方がいい点として、途上国から来て単純労働に従事する外国人労働者への扱いのあまりの悪さや、国民に蔓延する現場での労働を軽視する意識を問題としており、このあたりは成長後に大抵の国が経験する一局面ではないかと思う。

個別の事象についてはあまり関心が深まる記述ではなくさらっと読み飛ばす形となるところもあったが、政府系ファンドのあれこれやアフリカへの投資など新たな知識を得ることができたので、読んでよかったと思う。


[著者の他の作品]
「イスラムマネー」がわかると経済の動きが読めてくる!
「「イスラムマネー」がわかると経済の動きが読めてくる!」
 著者:畑中美樹
 出版:すばる舎
 発売日:2010-03-09
 価格:¥ 1,680
 by ええもん屋.com

にほんブログ村 本ブログへ
スポンサーサイト

この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック