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読んだ本の感想をつづったブログです。





塩野七生による『ローマ人の物語』シリーズの第14作で、アウグストゥス(オクタヴィアヌス)の業績と初期の治世について書かれている。

アウグストゥスは独裁制を目指して暗殺されたカエサルを教訓に、共和制への復帰を目指す政策を打ち出しながらも別に目立たない制度を作ったりすることで、着実に帝政を成立させていく過程が書かれているのが興味深い。

元老院議員たちがやりたがらないであろうこと、例えば辺境の防衛や統治をアウグストゥスが引き受けることで好評を得ながらも実権を握るやり方は、中国の『韓非子』などで家臣が君主から実権を奪っていく話を思い出させてくれる。

アウグストゥスがトップに立ったのが30代とかなり若く、約40年にわたってこのような変革を多くの分野で少しずつ目立たないようにやったため、著者はカエサルなどと比べて書きにくかったと語っている。

本作では統治エリアの編成、税制、通貨、選挙といった政策や、エジプトやアルメニア、パルティアといった周辺諸国との外交についても書かれていて、カエサル暗殺後の内乱で中断していたローマの変革がいかに多くの分野で必要と考えられていたかが伝わってくる。

アウグストゥス自身が軍事能力があまり高くない(自らが率いての戦いで勝率が悪い)ため、アグリッパやティベリウスなどの将軍に任せたケースが多いこともあって少し派手さには欠けるが、確実に手を打っていく話を興味深く読むことができた。






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関連タグ : 塩野七生,




「ドライな外国人とウェットな日本人」のような企業や社会で見られるステレオタイプな考えに対して、調べたり著者の経験からそうではない事例を出し、一見問題とされてきた性質や慣習などがいい効果も上げているのではないか?という話をしている作品。

ドライとされる外国の企業でもグーグルやシリコンバレーのベンチャー企業などではファミリー的な雰囲気や制度があったり、独裁的な経営者のイメージがあるジャック・ウェルチが従業員の家族に手紙を送るようなところがあったエピソードなどを紹介している。

そして日本で見られるハラスメント(嫌がらせ)については、実はこれが職場環境を「公平」ではなく日本人が好きな「平等」にする効果があるとか、格差が広がると富裕層のストレスが高まって早死にする傾向があるなど、言われてみればそういう面もあるなという話が書かれている。

後ろの方にある、日本人が不安を感じやすくて集団になりがちという傾向を遺伝子レベルでの話につなげているところでは、かなり以前に読んだ竹内久美子著『パラサイト日本人論―ウイルスがつくった日本のこころ』に書かれていたことを思い出し、まあまあ楽しく読むことができた。

何事にもいい面・悪い面があるということで、視野の広さをもちたいところである。




経済の不都合な話 日経プレミアシリーズ
ルディー和子
日本経済新聞出版社 2018/7/10



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声や仕草、言葉のちょっとした言いかえなどから相手の反応が変わる場合が多いことを示し、これを利用して自らに有利な形で暗示をかけるための手法を紹介している作品。

相手を刺激しないように反対と言わず「少し様子を見ませんか」と消極的な提案で引き延ばす方法や、イメージをはっきりさせる場合とあえて曖昧にぼかす場合の使い分け、心証を良くするための言葉など、具体的な手法が多く紹介されていて大いに参考になる。

後半では自己暗示について書かれていて、ポジティブな自己暗示をかける方法やモチベーションの維持に目標の立て方を工夫すること、相手から暗示をかけられそうになった場合の対策などについても書かれていて、バランスのいい構成になっていると感じた。

著者の他の作品と同様に実践的な手法が分かりやすく書かれているので、別の作品も読んでみようという気にさせてくれる。
特に、ここ10年くらいはより構成が分かりやすくなっているように感じている。






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1分間君主論 差がつく実学教養3 (1分間名著シリーズ)
ニッコロ・マキャベリ (著), 齋藤 孝 (著)
SBクリエイティブ 2018/6/13



1項目当たり見開き2ページで1分程度で読み終えられるようにし、77項目で構成されているシリーズの『君主論』編。

そのままのニュアンスだとどぎついと感じられる部分も現代のビジネスや社会生活に活かせるような形で解説していて、読みやすい。

読んでいくと、改めてマキャベリの『君主論』をはじめとした著書のリアリズムが時代を越えて通用すること、特に他力に頼り過ぎないことや、どう見られるかの重要性、大衆となった人間の弱さなどがストレートに伝わってきた。

このシリーズの他の作品にも劣らず、なかなか良かったと思う。
(『君主論』に関する本も、このシリーズに属する本も何冊も読んでいくと、さすがに書くことがネタ切れしてくる・・・)





1分間菜根譚 差がつく実学教養4 (1分間名著シリーズ)
洪 自誠 (著), 齋藤 孝 (監修)
SBクリエイティブ 2018/9/20


1分間資本論 差がつく実学教養5 (1分間名著シリーズ)
カール・マルクス (著), 齋藤孝 (監修)
SBクリエイティブ 2019/3/9


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関連タグ : 齋藤孝, マキャベリ,




90年代に連載されていた、幕張にある大学を舞台として大学生たちによるゆるい日常を描いた4コマ漫画の第1巻。
作者の作品では『いとしのムーコ(1)』や横浜ベイスターズを題材にした『ササキ様に願いを』を読んでいて、『ササキ様に願いを』にかなり感じが近い。

幕張は幕張メッセやマリンスタジアムがあって未来都市の様相を見せる海浜幕張駅周辺と、そこよりも湾岸道路をへだてて内陸で下町という感じの総武線の幕張駅に分かれていて、舞台は後者となっている。
そして柏、三咲、津田沼、誉田、君津、薬園台など、登場人物は千葉の地名や駅名が名字になっている。

極端な面倒くさがりですぐ汚部屋にしてしまう「サボテン女」の明日香を中心に、見た目は清楚だが恐ろしい一面を見せる桜子と弟のミチル、バイトの鉄人を自称し空回りをすることが多い誉田、男性らしからぬ料理好きで家庭的な津田沼らのキャラクターが魅力的で、楽しく読むことができる。

携帯電話がまだ珍しかったり、ポケベルが使われていたり、サイゼリアがまだ全国区ではなかった(千葉には多かったが東京でも珍しかった)など、90年代半ば頃ということが伝わる描写に時代を感じるのも味わい深い。

長らく連載され、読者から愛されてきた作品ということが伝わってきた。






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