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読んだ本の感想をつづったブログです。




NHKで放送されている教養バラエティ番組「ブラタモリ」を書籍化した作品の第14巻。
箱根、鹿児島、弘前、十和田湖の回を扱っている。

箱根では地獄や極楽に例えられる温泉の数々と、江戸時代にあった箱根の関所が紹介されている。
あえて谷底の歩きにくいところを通って関所に至るルート設定や関所が崖と芦ノ湖に挟まれた絶妙な立地、関所破りを防ぐために見張りの村が点在していたことなど、インフラの面では当時完璧に近い関門になっていたことを実感させられる。

鹿児島の回では大河ドラマ「西郷どん」で島津斉彬役を務めた渡辺謙がゲストで出演している。
そしてシラス台地の性質を生かした外城などの防御施設や、「たんたど石」や小野石といった火山活動によって形成された石を利用することで薩摩藩がいち早く近代化を図っていたことなどが紹介されているのが興味深い。

弘前では現存する天守を持つ弘前城のユニークさや禅宗の寺を集めた区画が防御を意図されて造られた話、リンゴ栽培が弘前藩士によって始められた経緯などが扱われている。
弘前城の桜の木に感謝をこめて肥料をあげることを「お礼肥」(おれいごえ)というが、クイズに出題されて近江アナが「穴掘り補給」と答えたのが広まった話が面白い。

本書の最後が青森県と秋田県の県境にある十和田湖と、十和田湖から流れる奥入瀬の渓流を訪れている。
ここは最も予備知識がなく、カルデラ湖で透明度が高いことや明治時代に始めたヒメマスの養殖に成功したこと、コケによって生まれた奥入瀬の森林など、地形が生んだ美しい景色や恵みについて書かれている。

十和田湖・奥入瀬の回以外は多分テレビで観ていた記憶があり、思い出しながら楽しく読むことができた。






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関連タグ : ブラタモリ,



ノンキャリアの警察官を退官して女子大の教授に転身した人物が、ゼミの女子大生たちとともに未解決事件の捜査を行う警察小説。
2010年に殺人事件は時効となったことが本作の背景にあるようで、オダギリジョー主演のドラマ『時効警察』が放送されていた頃とは事情が変わっている。

主人公の小早川は刑事をしていた期間が長くて警察学校の校長を最後に退官し、幼馴染の学者の紹介で三宿女子大の教授となり、ゼミでは「継続捜査」として未解決事件を題材に捜査の演習を行っている。

ゼミ生は蘭子、梓、麻由美、蓮、楓の5人で、それぞれ法律、城、世界の謎、薬、武道と趣味とする知識の造詣が深く、事件の捜査に妙なところで役立ってくる。

小早川は警察学校時代の教え子で目黒署の刑事である安斎から未解決事件の題材を提供してもらって捜査の演習を始めるが、捜査を進めるうちに本庁の特命捜査対策室(継続捜査をする部署)の保科係長や丸山とも協力することとなる。
彼らは女子大生たちと会えるという下心を隠していないように見え、積極的に絡みたがる描写が多いのが面白い。

演習の題材となった老夫婦殺人事件だけでなく、ゼミ生や同僚の竹芝教授が遭遇した学内での事件も並行して捜査しており、徐々に皆の知見が増していくところが本作の醍醐味のように思える。

ページを追うごとに小早川が実は伝説の刑事として優秀な捜査員を多く育ててきたことが保科や安斎の口から語られていて、本人が謙遜しているのと対比をなしているのもいい。

キャラクターの関係性がうまくまとまっていて面白い作品なので、続編の『エムエス 継続捜査ゼミ2』も読んでみようと思う。





エムエス 継続捜査ゼミ2
Posted with Amakuri
今野 敏
講談社 2018/10/18

時効警察 DVD-BOX
Posted with Amakuri
オダギリジョー (出演), 麻生久美子 (出演), 三木聡 (監督, 脚本)
角川エンタテインメント 2006/06/23

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関連タグ : 今野敏,



砂糖から、近代の世界史を解説している作品。
最近読んだ世界史関連の本に参考文献に挙げられていて、関心を持ったので読んでみた。

主にサトウキビから取れる砂糖を扱っていて、それを欧米人が夢中になっていかにして収穫を増やし、普及させていったかが書かれている。

サトウキビは熱帯で育ち養分を多く必要とするために連作すると土壌が荒れる性質があり、サトウキビの収穫や精糖には多大な労働力が必要とされることから、欧米人はカリブ海の島々やブラジルで奴隷を使用したプランテーションで砂糖を収穫するようになった過程が語られている。

そしてヨーロッパからは綿布や雑貨、西アフリカからは奴隷、中南米からは砂糖や綿花を輸出するという貿易システムが構築されていて、いかに過酷な労働に支えられてきたのかが分かるようになっている。

また、コーヒーや紅茶に砂糖を入れるようになった経緯やカフェ文化の発生、紅茶がらみでアメリカ独立戦争につながったエピソード、産業革命で発生した工場の労働者が砂糖入りの紅茶を飲むようになった理由など、イギリスを中心に多くの話が扱われていて、砂糖の影響力が強かったことには改めて驚かされる。

その後、産業団体間の対立が原因となって奴隷廃止につながったことや、18世紀末から温帯でも育つビート(サトウダイコン、甜菜)の栽培によって砂糖はサトウキビだけでなくなったことなど、広い範囲の話になっている。

ジュニア向けに書かれているだけあって分かりやすいだけではなく、大人が読んでも充分読み応えのある内容となっていて、20年以上にわたるロングセラーとなっているのも納得できた。






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企業経営者、コンサルタント、作家とさまざまな分野で活躍してきた人物による、出会った人々のエピソードや自身の経験を交えて菜根譚の言葉から得られる教訓を解説している作品。

順境に身を引き締めて逆境でも腐らずにやるべきことを続けること、自分自身や他人がいかに落ち着いた状態にするか、欲望に囚われすぎずにその場その場での楽しみを見つけることなど、いい言葉が多く収録されている。

著者と親交があったりエピソードを知った人物として稲盛和夫、松下幸之助、樋口廣太郎、スティーブ・ジョブズなどの話も書かれていて、有名な人物の話があるとより入りやすい部分はあると感じる。

この手の本を書く人にありがちな上から目線の感じもあまりなく、受け入れやすい文章なのも好感が持てる。
なかなかいい作品だと思う。






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関連タグ : 菜根譚,



戦争や平和条約交渉、戦争に備えたり戦争を避けたりするための国際関係の構築など、世界史で戦争と外交に関する事例を解説している作品。

カデシュの戦いの後にエジプトとヒッタイトで結ばれた世界最初の国際条約や、中世イタリアでメディチ家のコジモの尽力もあって奇跡的に平和が40年くらい続いた「ローディの和」、北宋とキタイ(契丹、遼)で結ばれた澶淵の盟という条約など、平和条約の話から話が始まっている。

そしてヨーロッパで長らく続いた宗教戦争の後始末や、「敵の敵は味方」式で異教徒や異民族、長らく対立関係にあったライバル国などと結ばれたありえなかったはずの同盟、ウィーン体制やベルサイユ体制など戦後に構築された国際関係システムがうまくいったりいかなかったりした話などが書かれている。

平和交渉は困難だが重要なこと、しばしば平和交渉は弱腰だと批判を受けやすいこと、国際情勢を見通さないとひどい失敗をすること、交渉ごとでは理念を持った方が有利なことなどが法則として挙げられている。
例えばウィーン会議で正統主義の理念によってフランスが敗戦国なのに賠償や領土割譲といったペナルティを避けることに成功したタレーランの交渉力は突出している。

ただ、理念よりもさらに有利なのは、軍事力や経済力を持つ側という部分を過小に書かれているような気がしないでもない。
国際交渉には武力の裏づけがなければ強制力が薄れるのは、現代の日本を見ても分かると思うのだが、著者はあまり書きたくないように感じられる。

フランクリン・ルーズベルトのことを戦後の国際体制の構築に功があったと大きく持ち上げていたり、現代の中国に楽観的な見方をしているところも違和感を持った。
特に、ソ連の影響を受けた可能性が高かったり日本に難癖をつけて戦争に引きずり込んだイメージが強いFDRのことは肯定的に評価したくない。

著者の歴史観にところどころ納得しにくいところもないではないが、知らない話も多くて参考になる1冊だと思う。






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関連タグ : 出口治明, ,