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読んだ本の感想をつづったブログです。



関裕二 (著)
PHP研究所 (2019/2/16)


縄文時代に関する近年の研究結果から、これまでの通説と違う部分、ヤマト建国に及ぼした縄文文化の影響、その後現在に続く日本史に出てくる縄文の思想などについて考察している作品。

かつては縄文時代は未開の文化とされる言説が多かったが、縄文時代がそれまで考えられていたよりも1万年以上という長期にわたっていたらしいことや、縄文時代から弥生時代に急激に変わったわけではないこと、それ以前に縄文時代と弥生時代の区別をつけるのが難しくなっていることなどが語られている。

例えば騎馬民族征服説のように大陸から多くの人々が渡ってきて日本を征服したようなことは遺伝子の研究などから否定されているようで、当時の航海技術を考慮しても短期間の多数の人が日本に来ることは考えにくいこと、そしてそれ以前から住んでいた人々の文化が定着していたらしい話につながっている。

さらに、文化や人の移動は大陸などからの西から東への流ればかりではなく、東から西へと縄文文化を持つ人々が移動する流れも多かったようで、この辺りは少し驚かされた。

そして稲作文化は縄文時代の早い段階から伝わっていたものの、あえて採用しない時期が続いたこと、その理由として「農耕をする社会は戦争ばかりする」という危険性に早くから気づいていたためという話が興味深い。

そこから、著者によるヤマト建国が東海や近江の勢力が大和に集まって北九州の勢力に打ち勝つことで成立したという話につながっている。
つまり、縄文の影響が強い地方の人々が弥生の影響が強い地方に勝利したという構図となる。

この2つの流れはその後も続いていて、好戦的な弥生タイプの代表が藤原氏で、平和的な縄文タイプが蘇我氏、そして時代を下って家康だとしていて、日本では時々縄文の思想が顔を出すという話がなされている。

研究結果のところで少し分かりにくいところもあったが、なかなか興味深い内容だったと思う。





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安能 務 (著)
講談社 (1992/01)


春秋戦国時代を真っ向から扱った歴史小説3冊のうちの下巻。

田氏による斉の簒奪、趙氏・魏氏・韓氏による晋の分裂などを経て本格的な戦国時代になり、始皇帝による統一までが扱われている。

孟子、荀子のような諸子百家と言われる思想家、張儀や蘇秦など口先で国を動かした遊説家、呉起や楽毅などの名将たち、商鞅のような改革者、多数の食客を登用し国政に影響を与えた戦国四君(孟嘗君・信陵君・平原君・春申君)や呂不韋など、歴史小説の主人公になった人物が多数登場し、人材や思想の面で華やかな時代だったことを再認識できる。

「まず隗より始めよ」、「刎頚之友」、「完璧」、「奇貨居くべし」、「鶏鳴狗盗」など、故事成語になっているエピソードも随所に出てくる。

儒教では孔子に次ぐナンバーツーの扱いをされる孟子については、論争で論理のすり替えのようなことをたびたびやってドン引きされるシーンが書かれ、「白馬非馬説」で詭弁の代表みたいな扱いをされる公孫竜とあまりやっていることは変わらないのに、儒教至上史観から持ち上げられすぎているという趣旨のことが書かれているのが面白い。

後半は秦の天下統一への過程が多く書かれているため、『キングダム』で活躍する人物も多く登場する。
他の歴史読み物であまり目にしたことがなかった、反乱を起こした王弟の成キョウ(長安君)や「山の女王」として描かれる(けどおそらく本当は男性と思われる)揚端和、盗賊団の首領上がりとして描かれた桓キなどの名前が出てくるのでテンションが上がる。

また、『キングダム』には(少なくとも今はまだ)登場していなくて、歴史読み物でもそれほど扱われていないように感じる、尉繚(うつりょう)という人物のことも印象に残った。
この人物は兵書『尉繚子』の著者の曽孫に当たるとしていて、始皇帝に「最高の兵法は兵法を用いないこと」と語り、他国の大臣を買収する戦略を提言し、成果を上げていることが書かれている。
そして始皇帝の恐ろしい部分を察知して逃げようとしたが、引き留められて才能を出させられた形になっている。

「始皇帝が悪く言われがちなのは中国人が本質的に統一や整った支配を好まないから」という趣旨のことを書いていたり、尉繚が提言した買収工作は現在の国際社会でもやっているお家芸だと感じたりと、なかなか読み応えのある作品だと感じた。
本書は20年近く前の作品ではあるが、再販しても売り方によってはそれなりに売れる可能性があるのではないかとも思う。





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安能 務 (著)
講談社 (1991/12)


春秋戦国時代を描いた歴史小説3冊のうちの第2巻。

斉の桓公が管仲を失った後の悲惨な末路から、晋の文公(重耳)や楚の荘王といった覇王となった君主、伍子胥の生涯から呉王夫差と越王勾践の戦い、春秋時代が長く続いたことによる権力の拡散などが描かれている。

宋の襄公という、覇王になれなかったけど「宋襄の仁」によって史書ではその扱いにされた人物、中原では脇役だが西域の覇王となった秦の穆公、晋の文公や宋の襄公との関係で登場回数が多い楚の成王なども登場し、複雑な時代であることが分かる。

夏姫、屈巫(子霊・巫臣)、趙衰、趙盾、華元、子産、伍子胥、晏嬰など、宮城谷昌光や塚本青史の歴史小説で読んだことがある人物が何人も登場し、テンションが上がる。

また、後半の方で登場する孔子のことは少しおちょくった感じで描いていて、これもまた面白い。

著者によるこの時代の地政学的な話や権力の話も語られていて、中原・西方(秦)・南方(楚・呉・越)という天下三分という構図や、君主が力を失って親族や有力家臣たちが権力を握る過程なども描かれていて、読みごたえがある。

もう1冊の第3巻も続けて再読する。






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猫又ぬこ (著), U35 (イラスト)
ホビージャパン (2016/10/29)


異世界に転生した青年が魔王を継ぎ、和平が結ばれた後も必ずしも関係が良くない人間界の女性騎士団の騎士たちと親交を深めるため、魔界ツアーに招くというストーリーのライトノベル。

主人公の颯馬(そうま)は異世界に転生する前は旅行好きで、先代の魔王から魔王の座を受け継ぐ前後から魔界を観光地に改造していた。
そして人間界で魔王と戦う魔法も使える女性騎士からなる、聖十三騎士団から3名を招待した。

当然ながら対立してきた魔王からの招待に疑いを抱きながらも「魔界を偵察する」という目的を持って参加した女性騎士たちだが、グルメ、温泉、エステ、マッサージといったサービスが、オークやミイラなどの魔物に提供されるうちに旅自体を楽しむようになっていく。

話自体は単調だが、魔物とインバウンドという組み合わせはちょっと面白かった。
おそらく、設定の雰囲気を楽しむ作品なのだろう。





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安能 務 (著)
講談社 (1991/11)


春秋戦国時代のエピソードを扱った小説3冊のうちの第1巻。
中学生か高校生の頃に読んでいて、久しぶりに再読してみた。

最初の悪女比べの話はひどいが、その次からはまともな歴史小説になっている。
1/3くらいが鄭の荘公と宰相・祭足の主従が活躍する話、そして残りが春秋の覇者第1号である斉の桓公と覇業を支えた宰相の管仲の話が扱われている。

桓公と管仲の話は有名で本書でもそれを再認識できて良かったが、覇者でもなくそこまで有名でもないためか小説で扱われることも少なそうな荘公と祭足の話は、珍しい分だけ本書の特徴みたいになっている。

周の支配が弱まったとはいえ、それでも周王室と親戚である姫姓の国が多くてまだ権威を尊んでいてあまり思い切ったことができない中、祭足が主導して自国の国益を追求する姿勢が出ているところが興味深い。

また、各国でのお家騒動や後継者争い、他国を引き込んでの陰謀騒ぎなど、中国の歴史らしさがこの時代から出ていることが分かる。

読んだ内容を忘れかけていたが、読んでいなかった間に得た中国史など知識が活きたのか、再読する前よりもいい作品だと感じた。





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